石竹

 

『荒野に咲く石竹』
 
 
ねー、あたしの髪の毛って、みんな不思議がるんだよ?
変な髪の色だってからかう人もいるけれど、気にしない。
剣ちゃんが真っ赤な色以外にその目に映してくれた最初の色なの、きっと。
美味しそうな金平糖みたいな色だから好きなんだよ、この髪の毛。
 
あたしも、あの草鹿で見たのは、真っ赤な色だったの。
他には、何もない世界だったな。
剣ちゃんは、そんな世界であたしが出会った大事な人なんだよ?

だって、
このあたしの目に、他の色を見せてくれたんだもん。
剣ちゃんの目に、あたしの髪の毛の色が鏡のように映っていたの。
・・・剣ちゃんの目に映ったあたしの髪の毛、真っ赤な色じゃなかった。
 
その時私は、初めてあたしの姿がどういうものかを知ったの。
・・・石竹みたいだなって思ったのは、後でゆみちーに石竹の花を
教えてもらってからなんだけれどもね。
ゆみちーが「なでしこってよりも石竹だ」って言ったから、多分そうなんだろうな。
 
 
剣ちゃんは、自分にとって価値のあるものしか、その目に映さない。
・・・その目にあたしを映してくれたということは、他の色を映してくれたってことは、
少なくともあたしに価値をみてくれたってこと、でしょ?
だからあたし、剣ちゃんが大好き。
大好きになる理由なんて、それだけで十分でしょ?
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
だから、
剣ちゃんに出会ったときのこと、忘れないよ。
名前をつけてもらったときのことも、忘れないよ。
何よりも、あたしをこの世界で最初に「価値あるもの」としてみてくれたこと、忘れない。
・・・雑草の中に埋もれて枯れていくはずだったあたしを見つけてくれたんだもの。
 
剣ちゃんはあたしの自由にさせてくれる。
あたしが剣ちゃんの肩から飛び降りることはあっても、
剣ちゃんは決して、あたしを振りほどいたり、落としたりしない。
でも、小さい子をを可愛がるように撫でてくれたり、庇ってくれたりすることもないけれどね。
それでもいいんだよ。
 
あたしは、剣ちゃんに小さい子どもみたいに撫でて欲しいとは思わない。
庇って欲しいとも思わない。
ただ、剣ちゃんが楽しければそれでいいの。
そんな剣ちゃんを見てるのが楽しいから、邪魔する人は許さないの。
 
 
きっと、これからも、
・・・あたしは、剣ちゃんという荒野のそばで咲く石竹。
でも、荒れ野に咲く石竹の花を甘く見たら、痛い目に遭うからね。
・・・覚悟しててよね?
 
 
 
 
 
なでしこ、というよりは「石竹」に近いかなと思いつつ。
儚い、おとなしいイメージがある秋のなでしこですが、四番隊隊長ではなくて、
敢えてやちるちゃんの「石竹」で。
一応、「なでしこ」は「撫し子」ということで、女性だけでなく「こども、幼子」にも使うものだそうです。
なのでまあ、やちるちゃんでも大丈夫かな?と。
最近は品種改良も進められているので、華やかだったり可愛らしいものも多いから・・・。
しかし、「大好き」だの「理由なんてそれだけで充分」なんていう台詞、今の私には言えない・・・
ストレートな気持ちを言えるのは、彼女の特権でしょうかね???
 
 

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