『紅葉と風と、生と死と』
俺の斬魄刀・・・
俺はコイツが嫌いだ。
名前からして、俺と気が合うとは到底思えねえ。
いかにもな名前を持ちやがる。
けどな・・・気付かされたんだ。
ある晩秋の夕方、出動して隊に戻る途中、俺はある物を見た。
何のことはない、頭上に広がる色鮮やかな紅葉だった。
俺は風流だの何だのと言うのには、自分で言うのも難だが通じてはいない。
むしろ、疎いほうかも知れねえな。
・・・そいつらを見て楽しむというより、酒を飲んでいるほうが好きかも知れねえ。
だが、そんな俺でも見入るくらい、その紅葉は息を呑むくらいの鮮やかさだった。
自然というモンは、こんなに生き生きとした色彩を持っているもんだな、と。
のんきに、見上げていたんだよな。
しかし、一陣の強風が、落ち葉を巻き上げ、枝を揺らす。
俺の頭上から、楓の雨が降りしきる。
そうだ、紅葉というのは、冬に備えて葉をわざと落とすために
栄養を断つ結果として起きるもの。
・・・以前、そう聞いた。
つまり、樹木が自らの身を守るために、葉の命を徐々に絶つ、ということ。
・・・この足元に広がるのは、言ってみれば、徐々に命を絶たれ、ついに力尽きた
命の亡骸の山、でもあるわけだ。
だが、この山を作ったのは、積もらせたのは、何も樹木本体だけではない。
俺は気付いてしまった。
・・・残り少ない命の鮮やかな色彩を、いとも簡単に命の根幹から引き剥がしたのは、
・・・残りわずかな命の紅を、刈り取るように宙に舞い上げるのは・・・
そして、地に還るように促し、導くのは・・・
・・・風。
『風』の名を持つ俺の斬魄刀は、命を刈り取るような形をしている。
そんな斬魄刀を、俺は好きになれなかった。
しかし、紅葉を散らした風は、次の『生』への橋渡しをするために、
紅葉に『死』をもたらした。
土に還り、また新しい命として生まれ変わるために。
もしも、俺の斬魄刀のこの名も、姿も、力も・・・
虚を斬る、戦う、恐怖を与える・・・そんな目的ではなく、
紅葉を散らす風のように、次の命への「橋渡し」のために存在するのであれば、
・・・少しはコイツを、好きにはなれなくとも、理解はできるのかもしれない、
そう思った。
・・・そもそも、斬魄刀は、そのためにある、はずなんだ。
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