『禁じられた花』 (サブタイトル『ルキアは何処にも嫁がせぬ・・・』笑)
広大な朽木の屋敷には、数多くの植物が植えられている。
勿論観賞のために植えられた植物もあるが、実用目的で植えられたものも数多い。
ある爽やかな皐月の頃、
「兄様、桐の花がとても綺麗ですね。」
心地よい風に着物の袖を遊ばせながら、ルキアがうっとりと見上げて
言うものだから、兄様もつられて頭上を見上げる。
見れば、藤の花にも劣らぬ、桐の咲き誇る姿が。
「うむ、見事だな」
「本当に綺麗ですね・・・たんすにするのが勿体無いくらい。」
「・・・何と?」
「この桐はたんすにされるのでしょう?」
「・・・清家殿が、この桐は花を愛でるためではなくて
いずれ私が嫁ぐときに、花嫁道具として持参する箪笥にするために、
私が朽木家に養子として迎えられた際に植えられた、と・・・」
「・・・・」
「こんなに立派で素晴らしい桐ならば、本当に素晴らしい箪笥ができますね!」
「・・・・」
今まで雲ひとつ無かった青空に、雲が少しずつ現れ始め、
・・・天候があやしくなって来た。
「・・・ルキア、雨が降りそうだ。嵐になるやもしれぬな。」
兄様はルキアを促して屋敷に戻る。
(そして、五月晴れを絵に描いたような空を瞬く間に雨雲が覆いつくし、
激しい雷と嵐をもたらし始めた頃・・・
・・・兄様の怒り、表面化!!!)
「清家、」
「ははっ、何でございましょうか?」
「・・・・」
「白哉様・・・?」
「・・・あの桐を、今すぐ伐り捨て置け。」
「しかし、」
「・・・二言は言わぬ、今すぐ伐り捨てよ!!」
・・・翌日、
「兄様、あんなに美しく咲いていた桐が・・・」
「先日落ちた雷で燃えてしまった様だ。
桐は油分が多く萌えやすいのだろう。
・・・お前は雷を恐れて外を見なかったのだろうから、知らぬも当然やもしれぬが・・・」
「そう、ですか・・・」
(・・・嗚呼、忌々しい。)
(でも兄様、桐って、燃えにくいから箪笥に使われる・・・んですよね・・・?)