『白い花』
兄様、もう山茶花の咲く季節になったのですね。
あの日、私にあなたを「兄」と呼ばせるに至った経緯を聞いたのは、
まるで遠い昔のことのようなのに・・・
あのときより、
私と兄様の距離が少しでも縮まったと思ったのは、私の思い過ごしでしょうか?
兄様、あなたは一人で、一体何をお考えでいらっしゃるのでしょうか・・・
白い山茶花の花がひらり、ひらり・・・と落ちていくたびに、
刻々と時が流れていくのを感じながら、
何一つ、私達の間には変わったものなど無いのではないか、
昔のままの、越える事の出来ぬ冷たい壁が存在し続けるのではないか・・・と・・・
ふとそんなことを、思ってしまうのです。
ルキア、椿の花はまだ咲かぬか?
あの日、お前に偽るのを止め真実を告げたときから、
ほんの僅かな時を刻んだくらいしか、経てはいないとはいえ・・・
あのときより、
私とお前の距離が大層縮まったと思ったのは、私の思い過ごしか?
ルキア、お前にはまだ私の考えることが判らぬやもしれぬ。
だが、白い椿がその珠の様な蕾を徐々に緩ませ、やがて咲き誇るまでに
積み重ねるだろう刹那を幾度も思い馳せながら、
お前であれば、私の為す事を理解できるのではないか、
私の思いを推し量ってくれるのではないか・・・と・・・
何の根拠も無く、考えてしまうのだ。
白い山茶花が抱くような高潔さを、兄様、どうか散らさないで・・・
白い椿が秘めるような誇りを、ルキア、どうか地に落とさぬよう・・・
・・・今できるのは、ただ、信じ、
これ以上散ることのないよう祈ることのみ。
やがて咲き誇るまで護りきることのみ。
白い山茶花の花言葉・・・高潔。
白い椿の花言葉・・・誇り。
六番隊の隊花が「椿」なのですが、「高潔な理性」は紅い椿の花言葉です。
兄は『本能に従う』『私の本能は誇りを護る事だ』と
言ってますし、ルキアはそんな兄が理解できずに苦しんでますね。
高潔さを半ば散らす勢いで突き進む兄を山茶花にたとえ、まだ兄を理解しきれないルキアを未だ咲かない白い椿に例えつつ。