桜と兎

『 年玉ラプソディ ~1年越しの憧れ~ 』

「一護、邪魔するぞ!!」
「うわ、ルキアなんだよ急に・・・って、白哉も一緒か??・・・」
「左様。
一護、兄と正月早々に顔を合わせねばならぬのは誠に不愉快この上ないが、
兄の家族にルキアが現世で世話になっているというのであれば、私も挨拶に行かねばならぬ。」
「・・・って、単にルキアを一人で現世に行かせて一人になりたくなかったんだろ?」
・・・散れ、千本・・・
「っておい待て、ここ現世だから!!!」
 
「お兄ちゃん、どうしたの?お客様~?」
「一兄、親父が待ってんぞ・・・って、あれ?」
 
「夏梨、遊子、久しぶりだな!!・・・」
「わぁ!!ルキアお姉ちゃん!!」
「マジでルキア姉ちゃんだ!!久しぶり!!」
「・・・でも、あれ?・・・後ろの人は誰?」
「おお、そうだったな・・・夏梨と遊子は兄様にお会いしたことは無かったな。
こちらは私の義兄でいらっしゃる朽木家二十八代目当主にして護廷・・・」
「ルキア、この童らは我らの世界のことを知らぬのであろう?
余計な説明は不要ぞ。」
「・・・そ、そうでしたね。
夏梨、遊子、改めて・・・こちらは私の義兄でいらっしゃる、朽木白哉様だ。」
 
(身内に敬語ってオイ・・・しかも兄貴の名前に『様』付いてるし・・・)
(ルキアに「兄」以外を呼ばれるのはどうも慣れぬな・・・決して嫌ではない、が・・・妙にこそばゆい。)
 
「わぁ、ルキアお姉ちゃんのお兄ちゃんなんだ!!
・・・はじめまして、黒崎遊子です。」
「黒夏花梨です。一兄がいつもお世話になっています。」
 「うむ・・・
此方もルキアが世話になっていると聞く。礼を言う。
・・・よく出来た妹達だな。兄である黒崎一護とは似ても似付かぬ。」
「最後の一言だけ余計だよな・・・」

縛道の六十一、六杖・・・
「(だから此処は現世たっての!!・・・)」

「・・・ソレはそうと、ルキア、なんで此処にいるんだ?」
「そうだ、私も兄様も直ぐ戻らねばならないのだが・・・
去年は、兄様がお前に年玉をお与えになっただろう?
私はあの兄様のお前に対するお心遣いに感動したのだ!!」
「ちっともコッチじゃ役立たねーけどな・・・」

破道の三十三、蒼火・・・
「(だから此処は現世だって言ってんだろ!!大体ここでやったらルキアたちまで焼くぞ??)」
「(この私がルキアと貴様の妹らまで焼くような無能だと?・・・)」
「(いや、そういう問題じゃないから!!・・・全くこの兄貴は・・・)」

「・・・で、それで?」
「それでだな、私も是非年玉をあげてみたいと思ってだな、」
「・・・俺、そんな年じゃねーし。」
「違う、お前ではないぞ一護。」
「え?じゃあ誰に・・・」

 
「ほら、これは私からだ。
こっちでは金目の物を年玉として与えるというが・・・此方の金銭とは勝手が違うからな。
すまぬ、色々と悩んでいたら、このような形になってしまった。
「え、私と夏梨ちゃんに・・・?」
「ああ、そうだ。遊子と夏梨にだ。
気に入ってもらえると嬉しいのだが・・・どうだろうか?」
 
「わぁ、可愛い!!・・・」
「桜を一杯に散らした文様のちりめん布で作った、兎の根付だ。
此方では『きーほるだー』、というのだったか。
・・・年の暮れに、お忙しいにも関わらず兄様も一緒に選んでくださったのだ。」
「え、ルキアお姉ちゃんと、お姉ちゃんのお兄さんも一緒に選んでくれたの??
有難うございます!!夏梨ちゃんとおそろいだね!!」
「遊子とおそろいだし、たまにはこういう可愛いのもいいな。有難う!!」
「実は、ほーら、私もおそろいなのだ!!つい私も欲しくなってな。
・・・兎はやはり可愛いものだからな。」
「え、じゃあルキアお姉ちゃんともおそろいなんだ!!」
「すげーな遊子、3人でお揃いだ!!」
 
「おい、でもよ・・・こっちとあっちの物質は・・・」
「霊子変換は済んでいる。兄の心配など無用だ。」
(そういう手際はいいんだよな・・・
流石ウィキ○ディアでも名前が挙げられる程に筋金入りのシスコ・・・)」
「(・・・正月早々から卍解を見たいのか?)」
「(・・・遠慮しとくぜ。)」

―けどよ・・・ルキアはあんなでもブラコンとは言われてないんだよな・・・ウィ○ペデ○アで。
 ・・・ってことは、やっぱり裏でキーホルダー2個のために霊子変換の手配まで完璧にする白哉って
 相当なシスコンってことだよな・・・現世までルキアについて来る位だし。―
 
 
「(黒崎一護、聞こえているぞ・・・散れ、)」
「(だから止めろって!!始解もダメだっての・・・)」

 
「・・・ルキア、時間だ、戻らねばならぬぞ?」
「え、もうそのような時間ですか・・・まだ早いのでは・・・」
「おい、もうちょっとゆっくりしていったらどうだ?ウチに上がって行けよ・・・
遊子や夏梨も久しぶりにルキアに会うんだしさ。」
「我が邸の押入れ程度の狭い家にいては、私もルキアも息苦しいだけであろう。」
「・・・何だとコラ・・・」
「私は嘘など言ってはおらぬが?」

「あーもう一護、私は戻るから・・・
さ、兄様、参りましょう・・・・・・遊子、夏梨・・・またな。
今度はゆるりと来れる時に来るからな?」
「うん、お姉ちゃん、またね~!!」
「お年玉のキーホルダー有難う!!ルキア姉ちゃん、じゃあな!!」
 
「・・・嵐が去った・・・。
・・・一体なんだったんだ・・・正月早々にあの兄妹は・・・」
 
「え?ルキアちゃん来ていたのか?」
「エロのヒゲダルマには会いたくねーって、さっさと帰っちまったよ。」
「夏梨酷いじゃないか~ルキアちゃんがそんなことを言うわけ無いじゃないか!!」
「でも、なんだか凄く忙しそうだったよ?お兄さんも一緒に来ていたし。」
「そうか~、忙しいんじゃ仕方ないなぁ。おじさんも会いたかったな~。」
「(正月早々、あんなのに会いたかねーよ・・・)」
 
「ルキア、」
「え、は、はい・・・どうされましたか兄様」
「・・・寂しいのか?」
「・・・あの一護の妹達には、本当に世話になっていたものですから・・・。
私には愛でるような弟や妹がおりませぬから、なついてくれたあの二人が尚更可愛いのです。
ですので少しだけ・・・別れるときだけはどうも。」
「・・・そうか。」
「で、ですが・・・その、寂しいのは別れ際だけであって。
それに、私には弟や妹こそおりませぬが、兄様という家族がおりますから、寂しくはないですよ?」
「・・・・」

「あの・・・お忙しいのに、一緒に根付を選んでくださって有難うございます。」
「割ける時間はそれ程多くは無かったが・・・」
「・・・ご一緒できて、すごく嬉しかったです。」
「そうか。」



桜の文様で兄様、黒崎家でもさりげなく存在を主張(笑)。でもあくまでも、メインは妹さんの『憧れ』の実現ですから。
そこは控えめに、意外とまともに柄も選んだんだろうなと思ってみたり。ワカメ柄の兎にはするまいよ(苦笑)

・・・映画でも妹さんには母親代わりになっていた子ども達がいたので(年は早々変わらないけれど)、もしかしたら彼女に弟や妹が本当にいたらとても可愛がっていただろうな・・・と思って。
そして兄様も、もしかしたら妹さんに(忙しいから少しだけ)そんな優しい時間を過ごさせてやりたい、などと思ったりしたのではないかな・・・と。
妹さんがプレゼントする兎2個のために霊子変換もちゃんと準備する辺り、やはりこの人は根っからの(略)
そこは一護氏の考えに1票入れます!!←背後から桜吹雪が迫ってないことを確認!!

でも、やっぱり一護氏と兄様は、相容れないようですが、息は合ってると思う・・・(苦笑)
結構『坊』な状態の兄様と、それを押さえようとする大人な一護氏を書いていて面白かったです。

 

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