※こちらは、本店のブログには(危なっかしくて)載せられなかった兄様お誕生日記念かきものの

本番ものです(『ユキワリソウ』も、前向きなお祝い気分で書きましたが)

 

鳥というものは、一対の翼を持ち、それをはためかせて飛ぶものだ。
では、其の翼の片方を傷めたら、どうなるのであろうか。
そもそも、片方の翼が欠けていた、となれば・・・・
 
・・・飛び立つことも出来ぬまま、地に落ち、朽ちるだけだとでも言うのだろうか。
 
 
『比翼の鳥』
 
 
以前・・・私を目にした者から、蒼穹に舞う白鳥の様だと例えられたことがあった。
勿論、それは常に完璧であるように努めて来た結果でもあろう。
だが、私はその例えを半ば自嘲気味に受け止めている。
 
『白哉様は、紺碧の空を裂いて飛ぶ一羽の美しい白鳥のように、それはまるで冷然とした・・・』
 
この言葉の意味を、理解していないわけではない。
恐らくは、清く涼やかな様、凛とした様子、と言ったものを例えたのであろう。
だが、もう一つの意味が私に諦めに近い思いを抱かせる。
 
―冷ややかで思いやりもなく、何があろうと平然としている様、か・・・・
 
・・・間違いでは、無い。
 
 
それでもかつては、一度だけでも『そうではない』様を見せた事はあった。
・・・悲しい目をして天を見上げる、片方の翼を失ってうずくまる、か弱く小さな『鳥』を見つけた時であった。
もっとも、私にはその鳥の内に、自分には無い物を見つけていたし、秘められたそれを大層美しいものだと思っていた。
 
私はその鳥とともに、あの蒼穹をどうにか飛んで行くことは出来ぬものかと画策したが、
共に地に在ることは出来ても、飛び立つ事は出来なかった。
哀しいかな、美しいと評された白鳥に出来たのは、
痩せこけて死を待つばかりの其の鳥の傍で今際の願いを聞きながら、只その命が尽きるのを見届けることだけであった。
無力な白鳥になお、『夢のようだった』と告げていったあの鳥の願いは、
自分の失った・・・斬り捨てたもう片方の翼を捜し、護って欲しい、というものだった。
・・・己の無力さに背を向け、白鳥は一人天に漂っていた。
 
 
あの鳥を看取ってしばらくの時を経て、私はもう片方の翼を見つけた。
同じように飛ぶことこそ出来ないが、それでも地面を一杯に走りまわり、いつかはもう片方の翼を得て天へ飛び立とうと志す若い姿。
私は有無を言わせずに、其の翼を自分のもとへ引き寄せた。
かつてのあの鳥の願いどおり、その翼を護るために。
 
結果として、白鳥は若い翼の志を折り、そして己の翼をも使い物にならぬくらいに傷めてしまったのであるが。
自ら傷めた翼を切り捨てた白鳥もまた、地べたを這い回るだけの存在になっていたことに気付くのは、もう少し後のことであったな。
・・・そう、私は冷然としすぎたのか、自分の傷ついた有様にも気付かぬくらいだった。
仕舞いには痛みさえも麻痺していたようだ。
愚かなことだ。
私は、かつてのように蒼穹を舞うことが、自分にとって当たり前のように尚も適うものだと思いこんでいたのだから。
 
己の翼を傷めたのは、若い翼を護るという約束のためではない。
あの若い翼の志を折り、更に地に突き落とすような真似をした際に、己の内に在った葛藤に揺るがされ、
苦し紛れに自らの翼を痛めつけ、遂には何時の間にか引き千切っていたというのが事の顛末である。
名誉の負傷といった、誇れるものではなく・・・浅ましく醜いもの。
・・・かつて天を舞った白鳥も、堕ちたものだと自らをあざ笑ったものだ。
 
 
それでも、全てを知ったとき、
このみすぼらしく堕ちた白鳥であったとしても、謂れの無い罪を着せられ、殺められようとしているあの翼を
の手で今度こそ護れるのならば・・・いや、是が非でも護る。
それは遠い日の約束のためでもなく、自らが手折った翼のためでもなく、己のため・・・・
 
・・・久々に感じた痛みであったが、傷つくことに悔いは無かった。
たとえ蒼穹に舞うどころか、地べたを這い蹲ることさえ出来ぬようになったとしても。
・・・このまま朽ちることになったとしても、だ。
 
かつて、あの鳥を看取ったとき・・・
私はあの鳥と共にそのまま朽ちる覚悟は有っただろうか。
己の大きな翼の下でうずくまるあの鳥を風雨から護ることに精一杯で、それもあの鳥の境遇への哀れみから、だけではなかったろうか。
共に飛び立てないものかと考えたとしても、それは・・・例えば私の背に乗せて、といったもので、
・・・己の力のみでどうにかしようとしていた。
勿論、あの鳥に力が残されていなかった、といえばそうなのかもしれないが、
それでもなお、共に出来た事はあったはず・・・そう、共に・・・。
 
 
だが、この若い翼は、私に志を折られたにも関わらず、散々傷つけられたにも関わらず、
なけなしの自身の力で私を護ろうとしていた。
護り護られ、生き生かされ・・・
・・・今までの私に足りぬ多くのものを、この翼は持っていた。
そして・・・やっと、分かったのだ。
 
 
・・・お前こそ、翼を失う運命を負い、運命に試された私に・・・既に与えられていた、もう片方の翼。
 
 
ようやく、痛みを感じ、そして声に出すことが出来る。
そのような堕ちた白鳥に寄り添うのは・・・・私が志を手折った、お前。
かつての私も、お前のようにあの鳥に、こうしていたな。
 
お前は自分の非力を私に詫びるが、そのようなことは無い。
お前が非力だと自分を思うのならば、それは私が非力であることの裏返し。
だからお前は自分を責めるな、責められるべきはお前ではなく私だ。
・・・なぜならお前が、私の翼、なのだから。
 
だが、お前から翼をもぎ取ろうというわけでは無い。
お前を傷つけようなどとは露程も思わぬ。
私の残された翼と、お前が持っている翼、共に支えあい、その二つをはためかせて行けばいい。
最早一人では飛べぬ体であったとしても、二人でならば・・・
 
 
いや、最初から私は・・・一人であの蒼穹を舞ってなどいなかったのだ。
他者からはそう見えていただけであろう。
舞えるだけの強さを、私は最初から持ってなどいなかった。
・・・だからこそ、看取ることしかできず、志を折ることしか出来ず、そして地に堕ちたのだ。
だが・・・一人では持ち合わせぬ対の翼も、蒼穹を舞う強さも、
お前という翼とともにならば、
 
 
 
 
確かに、今までお前の志を折ってきた私とお前とでは、
心を通わせて同じようにはためかせることはまだ適わぬかも知れぬ。
そして、お前の翼はまだ小さい、それは哀しくも否定できぬ事実であろうな。
だが、卑下する事はない・・・
いつか私にも負けぬくらいに、お前も強くはためかせることが出来るようになる。
何の根拠も無いが、私はそう信じることが出来るのだ、手放しに。
 
其のときまで、私は、
お前と共に強くなろう。
お前と心を通わせよう。
お前と共に地に足を付けて生きていよう。
 
そして、いつか・・・
 
 
・・・もう言わせまい、冷然な白鳥、と。
・・・もう言わせまい、名も無き片翼の鳥、と。
 
我らはまだ飛べぬ、比翼の鳥。
何時の日か必ず、二人の翼で、あの蒼穹を舞うのだ。
 
お前とならば・・・ルキア。
 
 

真の兄様お誕生日かきもの、(色々な方がいらっしゃる本店には)ちょっと載せられるような内容とは言えなかったので。

大体、前向きでも『比翼の鳥』の段階で、こりゃ人を選ぶな・・・と思いました。

 

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