あおやぎの

 

「よぉ、恋次・・・どうしたんだ現世になんて急に。」
「いや、それがだな一護・・・どうもいづらくて抜け出してきたんだ。」
 
「へぇ、あの白哉とルキアが喧嘩なんてな。」
「ま、喧嘩っていっても、いつもより余計に沈黙が続いてるだけで、俺たちにとっては普段と早々変わりなんかしないんだけどよ。
 それに、どっちかっていうと、喧嘩・・・ってよりは、ルキアが一方的に落ち込んでいるというか・・・。」
「それ、喧嘩っつーのか???」
「あの隊長に本気で喧嘩腰で突っかかるのは、十一番隊の隊長くらいだろ??」
「ま、ルキアは白哉に言い返すことなんてできねーだろうな。」
「そんなこんなで、沈黙がずっと続いてる訳だ。
 一応、慣れているとは言ってもよ・・・それでもやっぱり雰囲気がどうもいづらくてよ。」
「何となく理解は出来る・・・で、原因って何だ?」
 
「・・・おい、それが原因かよ。」
「ある意味、平和な原因だよな。
 俺とルキアだったら、どちらかがド付いて終わるんだけどよ。」
「あの兄貴じゃ、それもできやしねーしな。」
 だからルキアも何も言えなくてだんまりになって、ソレを見ている隊長も更にだんまりになってるわけだ。」
「・・・それ、何の我慢大会だよ。」
「・・・だから俺は脱落して、現世に逃げてきた、ってわけだ。
 一応、臨時の現世派遣、って名目はあるけどよ。」
「・・・ったく、あの兄妹は一体何なんだ?」
 
「でもよ、俺は隊長が根負けすると思ってるぜ?」
「あのプライドだけは天に立っているような白哉がルキアに負けるか??」
「ルキア自身は気付いていないけれど、あいつは隊長の弱点を無意識に突いてくるから。」
「???」
 
 
 
―ルキア、
―・・・・
 
―もうそのような顔をするのはよせ。お前が聞いているとは露知らず。
―・・・・
 
―・・・ルキア、
―私も自分の力の無さを自覚しております。兄様は事実を述べられたまでです。ですが、
―だが?
―・・・一寸の虫にも五分の魂、という諺がございます。
―・・・、
もっとも私など、一寸どころか・・・五分も無い下らぬ羽虫のような存在です・・・・
  やはり私は、あのように兄様が仰るだけの・・・
 
 
 
(私の誇りを護るはずが、図らずとも私が自ら刃を向けるような真似をしてしまうとは・・・・)
 
― 私もまだまだ、下らぬ羽虫の如き存在であろうな。
―兄様・・・?
 
 
「白哉の弱点、って??」
「・・・ルキアが眉根を下げて、肩をがっくりと落としている姿を見せられること。
 ましてや今回の原因は、隊長にあるんだからな・・・理由が理由とはいえ。」
「確かに、今の白哉には、とても効きそうだな。」
 
 
 
 
―お前の・・・あおやぎのように美しい、気品ある眉が下がるのだけは見たくないのだ。
  私はお前にならば何度でも詫びることができよう。
  ましてや、此度の事の原因は、私にあるのだから。
 
―兄様の・・・美しい柳眉を曇らせるような真似をして申し訳ございませんでした。
  何故あのようなことを仰られたのか、私も存じ上げております。
  にもかかわらず、私は愚かにも・・・・
 
 
あおやぎの眉に想いを絡ませて、再び結ぶ思慕の糸端
 
 
「でもさ、やっぱり自分のことを一番認めてもらいたいと思っている人間に、理由はともかく
 『劣っている』なんて言われるのは聞きたくねーよな。」
「・・・まぁな。
 隊長は、ルキアを庇ってそんなことを言ったんだろうけれどよ。
 ほら、身内を庇うためにわざと貶めることってあるだろ?話の上だけで。
 もっとも、俺はそういう庇い方をした隊長が意外だったりするんだけどよ。
 ・・・つーか、あの人、そもそも歯に衣着せないで、少ない言葉で核心を突くだろ。
 いつもがそうだから、事情を知らないで直接隊長の言葉を耳に入れてしまったルキアもそりゃ・・・」
「・・・確かに。」
 
「ルキアだって分かっているんだろうけど、理解は出来ても感情は収まらなかったんだろーな。
 アイツはアイツなりに必死なんだからな・・・朽木家に、というか、隊長に認めてもらいたくて。」
「・・・本当に、不器用な兄貴だよな。」

 

 

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