手紙
拝啓、未来の俺。
コレを読んでるときの俺は、一体何をしてるんだろうな。
あのヒゲ親父と一緒に医者でもやってるんだろうか。
それともまったく別のことをしていたりするかもな。
 
今の俺は、色々なことを経験して、少しだけ強くなれたような気もする。
けどよ、今でも・・・
あの日、俺が小さくて弱かったせいで死んじまった母親のことを思い出すとよ、
まだまだ俺には力が足りねぇ、って思う。
 
気持ちばかりが空回りして、自分でもどうにもならなくて、
強さってのが何なのかさえも見えなくなっちまうこととかあるし、
 
強くなったな、と思ったとたんに
自分の弱さや甘さを見せ付けられてしまうこともある。
 
けどよ、それでもさ・・・
立ち止まっても、もがいても、苦しんでも、
必ず一歩踏み出さなきゃならないときがある。
その時に、俺は踏み出せる力を持っているかどうかが、
俺が強さを得たかどうかの判断基準なんだろうな。
 
未来の俺は、そんな強さを得ているだろうか・・・?
 
ま、今の俺には何もわからねぇよ、でも、
とりあえず逃げたら全てが終わる、ってのは分かってる。
護りたいものも護れねぇし、強くなりたくてもなれねぇな。
 
未来の俺、見てろよ。
俺は逃げねぇ。
立ち止まっても、もがいても、悪あがきをしても、だ。
俺は俺が欲しいと思った強さを手に入れてェんだ。
・・・護れる強さ、を。
 
 
拝啓、未来の私。
一度現世で命を落とし、そしてこの世界で生きている私。
・・・つまり一度は死んでいる私。
そのような私が未来の自分に宛てて手紙を書くのも、馬鹿げていると思ったが・・・。
 
私は、これを読んでいるときは、一体何をしているだろう。
死神として手柄を立て、席官に昇進できているだろうか。
それとも志半ばで、この世界での命を落としているだろうか。
または死神ではない何か、になっているかもしれぬな。
 
死神を目指す前から、そして目指してから、
本当に色々なことがあったな。
 
失ったものも多かった。
大事な友をあの街で失い、死神を共に目指した友と別れ、
一時は大罪で命を失いかけたこともあった。
 
けれど、得たものも多かった。
現世での仲間に、再び繋いだ友との絆。
私が私としてこの世界で生きていることへの気概。
冷たい距離の向こうに居場所も見つけられたし、託された思いも知った。
 
そのような私の未来には、何があるのだろうか。
それは分からないが、ただ、
以前よりは、自分に対して前向きになれたような気もするのだ。
 
今まで自分がここにいる理由さえも分からぬままに、
目の前の現実から逃げて、只管走り抜けてきた。
けれど今は・・・一歩一歩踏みしめて歩めるのが嬉しい。
 
未来の私、
どうか今の気持ちを忘れずにいて欲しい。
そしてどんな私であったとしても、私であることの誇りを持てるような、
そんな道を歩んでいて欲しい。

 

 

 

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