桜 其の一

 

『蒼天の桜』
 
 
・・・現世は、心地よい季節になりました。
この蒼い空の下で桜を見上げると、あなた方を思い出します。
 
 
 
穏やかな日の光と、暖かな微風。
風に揺れるたび蒼天に舞う、柔らかな桜の雨。
・・・そして、それに包まれている、私。
 
私も、あなた方の暖かな優しさに包まれていましたね。
護廷十三隊に居場所を中々見出せなかったとき、
あなた方がいてくださった、ということが、どれだけ心強かったか・・・
 
いつも私を励まし、導いてくださった海燕殿。
美しくも力強く、そして優しさを併せ持っていらっしゃった都殿。
 
いつか、私もあなた方のような死神になりたい、と・・・
 
・・・そう、今も、私は・・・・
 
 
「おい、ルキア!!」
「・・・なんだ一護、私が折角物思いにふけっているというのに。」
「みんなあっちでオメーのこと待ってんだよ。
石田の特製弁当、さっさと来ねーと井上に全部食われるぞ。」
「朽木さーん!!早く早く!!石田君のお弁当、すっごく美味しいんだよ!!!」
 
 
海燕殿、都殿・・・
あの後、私は現世に派遣されました・・・
いえ、私は・・・あの世界から、逃げたのです。
けれど、あなた方が旅立たれた後、あの世界で見出せなかった『居場所』を、
この世界で見つけたのです。
・・・立場も住む世界も超えて、有りの侭の私を見てくれる、仲間がいるのです。
 
「ああ・・・今、行くぞ。」
 
・・・聞こえますか?
蒼天の下で咲き誇る桜の雨の中、私の名を呼んでくれる、現世の仲間の声が。
 
 
 
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