桜 其の二

 

『月下の桜』
 
 
尸魂界の桜も、美しい花を咲かせる季節になりました。
・・・十三番隊は、浮竹隊長以下、相変わらずです。
今日は、隊の役務が終わったあと、有志で夜桜を楽しむことになったのです。
 
 
現世で見上げた、蒼天の桜も美しかったのですが、
この世界の夜桜も・・・美しいと思えるようになりました。
 
春の月の光はどこか柔らかで。
そんな月の光が照らす桜の色も、とても柔らかで。
 
白く浮かび上がる桜は、暗闇にふわり、と・・・明かりを燈すように輝いています。
まるであなた方が、右も左も分からぬままに放り込まれた私に、
一筋の道を示す明かりを差し伸べてくださったように。
 
・・・そう、暗闇の中、途方に暮れた私に・・・
この花のような灯を与えてくださったのは、他でもない、あなた方でした。
 
 
「おーい、朽木、早くしないと仙太郎と清音にご馳走を全て食われちまうぞ!!」
「朽木さーん!!こっちこっち!!
早くしないとこのあごヒゲ男にぜーんぶ食べられちゃうんだから!!」
「何だと清音!!おめーもさっきから食ってばかりじゃねーか!!」
 
一度は罪人として、この世界と別れることを覚悟した私。
けれど、そんな私を・・・救おうとしてくれた浮竹隊長達。
そして、全てが落ち着いた後・・・再び私を迎えてくれた、十三番隊。
 
・・・そこにあったのは・・・・
 
 
海燕殿、都殿・・・
あなた方が旅立たれた後、私はこの隊に居場所などないと思っていました。
けれど、今・・・私は一人の死神として、此処にいます。
この隊にも、私は『居場所』があったことに、気付くことができました。
 
「はーい、今行きます!!」
 
・・・聞こえますか?
月明かりの下、白い花明かりの中、
私を再び仲間として迎えてくださった、隊の仲間の・・・私を呼ぶ声が。

 

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