『春の化身』
変えようも無い過去を背負って俯きがちなところ、
素朴だけれどもどこか気品の漂う姿、
常に誇りを秘めているかのような紫色、
小さく儚いようで、力強く蒼天を仰ぐ、あの野の花のようだ。
「・・・菫の咲く時期になったのだな。」
「ルキア、菫なんて知ってんのか?あのだだっ広い屋敷じゃ咲いてなさそうだけれどな。」
「・・・流魂街で暮らしていた頃に、摘んで遊んだのだ。
年のころからいけば、夏梨や遊子ぐらいの年頃のころ、だったか、
・・・もう少し幼い頃、だったか。」
「へーぇ、そんな時期がオメーにもあったんだな・・・。」
「私にもそれは愛らしい幼子だった頃くらいあったのだ、貴様が知らぬだけで。」
「・・・今の口ぶりと言動からは想像もつかねーよ・・・・」
-・・・ドガッ!!!
「・・・ってーな。何だよ背後から蹴り入れやがって。」
「最後の一言が余計なのだ、たわけが!!」
・・・いざとなれば弾けるところも、同じだ。
「お、一護・・・虚が出現したようだな。」
「しゃーねーな、行くか・・・誰かさんが蹴飛ばしてくれたせいで弱った結果負けそうだったので逃げました、
・・・なんて言い訳したくねーし。」
「・・・何か言ったか・・・?」
上から見れば俯いているように見えるけどよ、
この花、高い場所に生えているのを下から見上げると・・・
こっちを見下ろしてるようにも見えるんだよな。
・・・今のコイツみてーだ。
「行くぞ、一護!!」
「おぅ!!」
春に咲き誇る菫の花姿、その表情・・・
何度見てもオメーの姿とダブるんだよな、ルキア