『秘密』
美しい花にはとげがある、っていうやろ?
せやけど、そこらへんの野の花にも、それはそれはおっかない秘密があるんよ?
たとえば、この花。
名前、何ていうか知ったはる?
・・・「弟切草」や。
えらい物騒な名前やと思わへん?由来も物騒な話や。
何でも、この花で作る門外不出やった薬の作り方を、その家の弟はんが掟を破って漏らさはったらしいんよ。
そこで、その家の兄はんが怒り狂って切り殺してしもたんやとか・・・。
・・・ほんま、物騒やね。
まぁ、この花自体はエェ薬になるらしいんよ。
そこらへんに生えてる黄色いけったいな花なんやけどな。
・・・この花が持たはる秘密、ってところやろな。
え?ついでにボクの秘密も知りたい?
アカンアカン、やめといたほうがえぇよ。知ったら最後、何処にも戻れへん。
秘密にしている事柄は、自分の弱点でもある可能性が結構高いやろ?
其れを自分から「はいどうぞ」とさらけ出すおめでたい人なんて、おると思う?
ましてや、知られてのうのうと帰すのは、さらにおめでたいやろ?
そもそも、ボクは別に何も隠しているつもりはないんよ。
・・・周りが何にも気付きもしぃひんだけ。
せやから、ボクも余計なことを言わへん、それだけや。
せやけど・・・
もしもボクが、余計なことを言うとしたら・・・それは・・・
-・・・ごめんな。
それはきっと、さいなら・・・と言うとき、や。