『 びわ ~未だ果たされぬ約束~ 』
「・・・これでよし、と・・・。」
「なぁ恋次、これで本当に芽など出て、実もなるのか?」
「決まってんだろ、ぜってーに芽が出て、橙色の甘い実がなるんだぜ。」
「いつ頃だ?」
「まぁ・・・『桃栗三年柿八年、枇杷は早くて十三年』っつーからよ、」
「何!!そんなに待つのか???」
・・・あのときのルキアの驚いた顔、今でも忘れねぇ。
「そんなに待てぬぞ!!恋次!!
・・・そんなに掛かっては、いつまでたってもあ奴らに・・・・」
確か、あの時は・・・
俺たちが中央霊術院に入った年の、よく晴れた皐月の空の下で。
同期の奴から貰った枇杷を二人で食っていたんだ。
所謂「お裾分け」ってやつで、俺は二個貰ったもんだから、
ルキアにも分けてやろうと思って持って行ったんだ。
俺もルキアも、まだまだ、あの生活に慣れねぇ頃で・・・
自然と二人でいることも、多かったな。
ルキアは勿体ぶって・・・つーか、やけにしみったれた食い方をしていた。
俺が其れを指摘しながら、枇杷が嫌いなのかと聞けば・・・
あの街に置いてきた、今は亡きあいつ等にも食わせたかった、と。
「あ奴らのことを思うと、一気に食べることなどできぬ』、と・・・・
俺の手のひらの上に乗った、食うところが少ねェ割にデカい枇杷の種。
ふと、俺は・・・これを埋めることを思いついた。
もしかしたら、芽が出て、木になって・・・実をつけるかもしれねェ。
そうなれば、あいつらにも・・・
靜霊廷のはずれの草原で二人、しゃがみこんで穴を掘って、
それぞれが食べた後の枇杷の種を埋めながら・・・
―・・・いつか、此処で成った実を、あいつらの墓に届けよう。
そして、俺と、ルキアと、あいつらと・・・
・・・皆で一緒に、今度は腹いっぱいになるくらい食べよう。―
・・・そう、約束したんだよな。
「そんなに驚くなって。
・・・それまでには、俺たちもいっぱしの死神になってるはずだぜ。」
「・・・あ、」
「俺たちが死神として手柄を立ててるところを、あいつ等にも教えてやろーぜ。
・・・この種から成った枇杷を手土産に、な。」
「・・・そうだな。」
けどよ・・・
・・・その約束は、果たされぬまま・・・・
十三年どころか、ずっと年を経て、今此処に。
・・・あの枇杷は、大きな木に育って、立派な実をつけているんだろうか?
若干シリアスにいじってみましたが、どうでしょうか・・・?
時間軸は特に考えていません。
ルキアが養子に入って十数年経った後くらいの話としても、今現在の話としても読めるんじゃ、ないか、な・・・と。はい・・・。
なんだか色々とすみません。。。
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