木苺

『些細な棘に痛みを知るとき』

 
 
 
「剣ちゃん、良いもの見つけたの。
真っ赤で血みたいでしょ?美味しいんだよ!!」
 
 
オレは小せぇガキには興味もねえし、煩せぇヤツは片っ端から叩き斬る性分だ。
それは誰に対しても変わりゃしねぇ。
コイツだろうと特別扱いはしねぇつもりだし、現にしちゃいねぇよ。
 
コイツが勝手に離れていくならそれで構わねぇし、
コイツがオレの目の前で切られようと、コイツの運がそれで尽きたと思うだけだ。
それも誰に対しても変わりゃしねぇよ。
 
けどよ、コイツは・・・コイツだけは今まで出会ってきたヤツと根っから違っていた。
血まみれのオレに向かって、笑いやがった!!
 
今までオレと対峙したヤツは、余程のことがなけりゃビビりやがる。
そんなオレに噛み付いてきたヤツも数知れねぇ。
そんなオレに、初めて笑ったのがコイツだ。
 
 
「ねぇ、剣ちゃんも食べる?美味しいよ木苺」
「・・・ン?」
 
オレに、こんな風にモノを勧めてくるヤツも、コイツだけだろう。
コイツは最初からそうだった。
 
こんなヤツだったから・・・オレはコイツに名前を付けたんだろうな。
適当な名前なんかじゃねぇ、オレにとって意味のある名前を、だ。
 
「・・・いらないの?」
 
といってもよ、オレが勝手に拾い、名前をつけたところで
オレはこれっぽっちも責任なんて感じねーよ。
コイツが何かやらかしたとしても、またコイツ自身に何かあろうとも、な。
コイツが自分でやったことには、自分で落とし前を付けろ、というのがオレのあり方だ。
 
 
でもな、仮にもよ、オレに良心の欠片があるとしたらよ・・・
 
「剣ちゃん、甘いの、嫌い・・・?」
 
こういう顔をされるとよ、柄にも無えが・・・チクリ、と何かが痛みやがる。
戦いでバッサリ斬られるよりも性質が悪い。
こんなもん、些細な棘に引っかかれたようなモンなのによ。
 
「オイ・・・一つ、よこせ。」
「うん!!」
 
コイツの悲しい顔だけは見たくねぇし、させたくねぇ。
ましてや、オレのすることでそんな顔をさせることだけはな。
ソレがたとえ、些細な食い物のことであったとしても、だ。
 
「おいしい?」
「・・・酸っぺぇな、此れ」
 
 
 
 
 
 
木苺の花言葉は『良心の呵責』
もしも彼が其れを感じることがあるならば、きっと彼女限定な気がします。。。
 
 
 
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