ワイルドストロベリー

『罪作りな植物、そして彼女』

 
 
「おい、ルキア、それ何だ?」
「おぅ、恋次・・・此れはだな、『わいるどすとろべりー』というものだそうだ。」
 
・・・ワイルドストロベリー・・・
俺だって知っている、何年か前に現世で流行した植物だ。
何か・・・恋愛成就するとかなんとか・・・
 
れ、恋愛成就????????
 
「どうしたのだ恋次、そんな狐にでもつままれたような顔をして。」
「い、いや・・・・」
 
ルキアが、ルキアが・・・??
そんな、恋愛ごとなんて疎そうなルキアが???
あの怖い隊長の鉄壁のディフェンスに囲まれたルキアが????
 
どうしちまったんだルキア!!!
 
「そ、その・・・あのなルキア、」
「どうした?恋次」
「いや、その・・・ソレってさ・・・」
 
まさか、ルキア・・・そんなモンに願掛けしたくなるような相手が出来た、とか???
お前にそんなモンを入手させるような衝動に駆らせたヤツは一体誰なんだ????
(いや、俺なら嬉しいけどよ、それはそれでまぁ・・・・)
 
つーか、そんなモン見たら、アノ隊長だって『怒髪天を衝く』を地で行くような形相になるだろうよ。
オレだって・・・コイツが思いを寄せるような相手がいるなら、自分で決めた戦いの作法なんて無視して闇討ちでもしちまいそうだ。
 
「ああ、此れか?」
「それってさ、現世で一時期・・・・」
 
「卯ノ花隊長に頂いたのだ。」
「へ?」
 
「卯ノ花隊長の薬草畑で此れが繁茂しておってな。
葉は咳止めや喉の調子が悪い時に効果があるらしくて、また実も甘さはそれ程でもないらしいが香りが良いし栄養価も高いからと植えたら・・・必要以上に増えてしまったらしいのだ。」
「・・・はぁ、」
「そこで、欲しい者に裾分けしてくださるということだったので、貰ってきたのだ。
こうして見ると、白い花も、赤い実も可愛いだろう?
丈夫だそうだから、鉢にでも植え替えて自室に飾ろうと思うのだ。最近現世で流行の草盆栽としても楽しめるかもしれないからな。」
 
・・・現世の流行を知っていながら、
何故ワイルドストロベリーのことを知らないんだルキア???
 
「そういえば・・・何故かはよく分からぬが、やけにこの『わいるどすとろべりー』が女性死神協会の面々に人気だったな。
私が話を卯ノ花隊長から伺って・・・頂きに行った際、女性死神協会の面々が既に大集結していたからな。
ずっと欲しかったような顔をしておる者も多かった。」
「ああ、多分そうだろうよ・・・。」
「お?恋次、何か貴様は理由を知っておるのか??」
 
絶対にコイツには言えねぇ!!!!!
逆に妙な意識をさせたら、色々と面倒くせぇかもしれねぇ。
 
「いや、多分オレの勘違いだ。」
「そうか。
そうだ恋次、此れにもっと実がなったら、食わせてやっても良いぞ。」
「・・・ソレ、不味そうだろ・・・どう見ても。」
「卯ノ花隊長は『味は甘くないものの、酸味も少なめで香りが良いですよ』と仰っていたが・・・。
もっとも、隊長は葉を薬草として用いるために植えられたらしいからな。」
 
早速植え替えをしなくては、と言って・・・アイツは小走りで屋敷に向かって行っちまった。
ちょっと寂しい反面、どこかホッとしている俺がいる。
 
やっぱりルキアはああでないと!!!
 
・・・世の中には、知らないほうが良いこともあるんだ。
現世での『ワイルドストロベリー』の逸話も、きっとその類だ。
 
 
 
 
 
やはりルキアさんはこうでないと!!・・・と思ってしまうのは私だけでしょうか。
恋愛ごとに疎くて、逆に周囲の皆様が振り回されてしまう、という!!
 
・・・ちなみに、屋敷に持ち帰り兄様がワイルドストロベリーを見た後の話は、別のお話です。
 
 
テキストたち10に戻る