「芳しい、それ故の苦悩」


 
お前を滅却師にしたくはなかったのだ。
お前に私の跡を継がせたくはなかったのだ。
私で最後にしたかったのだ。
 
たとえ、お前が自ら望もうとも。


 
お前は私ほどではないとしても、血統を継ぐ以上は才を秘めているのだ。
それが健やかに成長を遂げ、才もまた開花すれば・・・どうなるか。
自分の置かれた状況を理解できてなどいないお前には、分かりなどするまい。
 
佳き花木は密やかに花開こうとも、その香で存在を明らかにしてしまうだろう。
まして順調に育った株はより強い香を放つ。
それはまるで目立たぬように白を纏う月下香のように。


 
お前に危険な冒険だけはさせたくなかった。
お前の存在を奴らには嗅ぎ付けられたくなかった。
わざわざ芳しい香を自ら放ち、お前を害するものを惹き付けるような真似など・・・。
 
健やかに育てと願いながらも、その才は伸びるなと願うとは。
理解はしている、親として何と愚かなものか、と。
だが、最早私にはどうにもできまい、お前の望んだ道なのだろう。


 
ならば、私が出来る事は・・・・


 
己の限界を弁えず未熟な力を奮い、挙句の果てに全てを失ったお前。
その様な愚かなお前に、ある程度は奴らに対抗出来るだろう才を再び纏わせる事のみ。
お前に何かを約束させたところで、下らない屁理屈を捏ねて反故にすること位想定の範囲だ。
 
(お前が望まなくとも、哀しいかな私がお前の親だからだ。)
 

 

 


もっとも、
自分がどういう意味をもつ存在であるのか、何も知らずにいるお前が出来ることなど高が知れているが。
せいぜい、己の身を己で守れれば良いだろう。

・・・「親」である竜弦さん、悉く雨竜くんを死神から遠ざけたり、滅却師としてのアレコレについて駄目出し(最早「駄目出し」というレベルじゃないけれど)

をしたり・・・かなり手厳しいですよね。
ですが、此処最近のぶりーちを見ると・・・もしかしたら虚圏のアレコレ以前に滅却師絡みでこうなる事を分かっていて、(力が有ろうと無かろうと)

雨竜くんを巻き込みたくなかったのではないかな、と思えてきまして。
滅却師として一人前になってしまったら、死神と関わっていたら、系統云々関係なく争いごとには巻き込まれるわけで。

・・・でも、全く以って才能がないのであればともかく、ちょっとでも才能を受けついじゃった段階で、巻き込まれるのはほぼ確定じゃないでしょうかお父さm(ry


 

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