『 しあわせ とは、きっと・・・・』

 

(後編)

 

 

「・・・おい、恋次、居るか??」

「何だルキアか・・・何の用だ?」

「折角の休みだと言うのに、寝ていただけか貴様は。」

「折角の休みだから寝てたんだろーが。」

 

ガサガサ・・・

 

「此れを、お前にやろう。」

 

「何だ?コレ・・・。」

「“すいーとぽてと”だ。」

「何だ其れ?」

「現世でよく見かけた、甘藷で作られた洋菓子のようなものだ。

雀部殿にお願いして、御指南いただいたのだ。」

「御指南・・・ってことは、コレ、お前が作ったのか??」

「ああ。」

「・・・コレ、食えるのか???」

 

―ドゴォッ!!

 

「痛ってぇ!!・・・テメェ、何すんだ!!」

「其れは此方の台詞だ。人が折角精魂込めて作って持ってくれば貴様は!!

腹に蹴りを入れられたくらいで済むのだから有り難いと思え!!」

「・・・ったく。オメェには前科があるだろ。」

「何のだ?」

「ガキの頃のお前の料理、最悪だったじゃねーか。」

「・・・あれは食材も粗末であったし、私も幼かったが故に料理の勝手も分からなかったからな。」

 

「・・・で、何で此れを俺に?」

「貴様、今日は誕生日であったろう?だから休んだのかと思ったが。」

「あ、忘れてたぜ。」

 

「朽木の家の者に頼っては、秘密も無いに等しいからな。

それで・・・以前手作りの菓子をご馳走になった雀部殿に相談して、ご指南を仰いだのだ。

貴様を驚かせたかったからな。

・・・って貴様!!聴いているのか???」

「此れ旨ぇ・・・さすが雀部さんだな。」

「雀部殿は指南はしてくださったが手は一切出さなかったぞ。私がそうしてくれとお願いしたのもあるが!!

だから其れは全て私が」

 

「旨いぜ、ルキア。」

「・・・・」

「お前もちゃんと作れるんだな・・・ちょっと見直したぜ。」

「別に貴様に見直して貰わなくても結構だ。」

 

「おい、貴様・・・ちょっとは何か喋ったらどうなのだ?

さっきから食ってばかりでは無いか??」

「だって旨いんだから仕方ねーだろ。」

「明日寝て起きたら芋になっていても知らぬぞ!!」

「此れくらいで芋になるんだったらとっくに俺はたい焼きになってるぜ。」

 

「でもさ、ルキア」

「何だ?」

「此れを作るために雀部さんの所に行ったのか?」

「ああ、それだけのためだ。」

「意外だな、あの人がこんな菓子をつくるなんて。」

「英国教室をやっているだけあって、紅茶に似合う菓子の探究心もお持ちだからな。」

「・・・お前も菓子、作れるんだな・・・白玉ぜんざい以外も。」

「我ながら、今回は特別頑張ったと思う。

雀部殿にも『指南だけで手は出さないでくれ』と失礼ながら申し上げたら、其の通りにしてくださった。」

「そっか。」

「だから其れは正真正銘、私の手作りだ。」

 

「それにしても、よく俺の誕生日を覚えていたな。」

「当たり前だ。」

「・・・四十年近く、ずっと・・・その、離れていたからよ、忘れてるもんだと思った。」

「早々忘れやしない・・・あの街で生きてきたあ奴らのことも、貴様のことも。」

 

―自分でさえも忘れていた誕生日を覚えていてくれて、

 そのために一生懸命にこうして準備してくれて、

 一緒に時間を共有してくれて・・・

 

 ・・・何か、幸せだ。

 

「有難うな・・・誕生日の贈物。」

「・・・ああ。」

 

 

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