『初めての贈り物』

 

(その1)

 

 

「・・・たしかこの辺だよな。」

「ああ、そうだ。この地図によるとこの辺りに・・・。」

「しっかしよぉ、急に栗拾いをするなんて何事かと思ったぜ。」

「悪いな、恋次。」

「・・・お前らしいといえば、らしいけれどな。」

 

−恋次、栗拾いに付き合え。

−は?栗??

−理由は後で幾らでも話す。

−まぁ、暇だから良いけどよ・・・。

 

「あ、これじゃねえの?」

「おお、これだろうな。」

「じゃ、拾うとするか。」

「毬(いが)に気をつけろよ恋次。ハサミで気をつけて取るのだぞ。

あと足元にもだな」

「痛ってぇ!!」

「最後まで人のいう事を聞け。踏まぬように気をつけろ。」

「現世の すにーかー がありゃこんな毬なんざ踏みつけて楽に出来るのによ・・・。」

 

「これは虫食いだな。」

「犬吊にいた頃はこんなモンでもご馳走だったよな。」

「ああ。」

「でも、今回は使えねーな。」

「致し方あるまい。自然のものだからな。」

「まぁそれでもよ、何個かはどう頑張っても虫食いがあるかもしれねーな。」

「それはそれで仕方あるまい。虫食いが混じっていてもきちんと処理できる方法があるらしいからな・・・

出来るだけ虫食いを取り除くに越したことは無いが。」

 

「で、これはしばらく放っておくんだろ?虫が湧かないように処理して。」

「ああ。・・・それに甘藷と同じで、寝かせるとより甘くなるそうだ。」

「・・・間に合うのか?」

「このあたりのは早生の栗らしい。

計画実行から逆算して、このあたりの栗であれば、今収穫すれば間に合うと言っていた。」

「そっか。」

「喜んでくださるかどうか・・・。」

「大丈夫だろうよ。」

「何故そう思うのだ恋次。」

「・・・何だかんだいってもよ、お前のこと無碍にはしなかっただろ?あの人も。

そりゃまぁ、色々とあったかもしれねーけど・・・。」

「そうだな。」

 

「もう、秋の空なんだな。」

「そうだな。」

「さて、帰るとするか。」

「ああ・・・今日はありがとう。」

「別に構わねぇよ。そういうの嫌いじゃねぇし。」

 

 

「おかえりなさいませルキア様。厨の皆で心配しておりました。」

「色々とすみません。無理な相談をしてしまって。」

「いえ、お気持ちが分かるからこそ私達もご相談に乗ったのです。栗は沢山拾えましたか?」

「ええ、此れくらいなのですが。」

「これだけあれば十分でございます。頑張られましたね。

では虫が湧かないように処理だけしてしまいますので、お預かりして宜しいですか?

勿論、実際にお使いになられるときはルキア様とご一緒いたしますので。」

「お願いできますか?何も知らない私よりもお任せした方がよいと思いますので。」

 

 

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