『初めての贈り物』

 

(その2)

 

 

(2週間後)

 

「ではルキア様、始めましょうか。

厨の中でも菓子が得意な者を集めましたので、お力になれると思います。」

「お願いいたします。

何を先ず始めれば良いでしょうか?」

「栗の皮むきから始まるのですが・・・大変申し上げにくいのですが、この和栗は大変渋皮が向きにくいものございます。

ルキア様がお怪我をされては大変ですので、もしも差し支えなければ」

「いえ、私にも剥かせてください。」

「ですが・・・・」

「手を切るくらいならば、鬼道で私も自分のことくらいは治療できますから。」

「お気持ちは分かりますが、そういう問題ではなくてですね」

「・・・なんとか、自分でやってみたいんです。」

 

「・・・分かりました、では一緒に最初からやりましょう。

ただ、本当にお気をつけてくださいね?」

「はい。」

 

「昨日の夜から水に漬けておいたのです。こうすると外の固い皮が剥きやすくなるのです。

まずはこの皮を包丁で切れ込みを入れて取り除いていきます。」

「包丁で切れ込みを入れた後、手で取り除いても大丈夫ですか?」

「ええ、問題は御座いませんが・・・手を傷めぬよう気をつけてくださいね。

もっとも、全て包丁で取り除くよりは刃物で怪我をする危険は減るかと思います。

それと・・・申し上げにくいのですが、皆で手分けをしても宜しいですか?

少々お時間がかかる可能性がございます故。」

「すみません・・・。」

「ですが、2品作るうちの・・・今回本当にルキア様のお手で作られることが重要な意味をもつ方は、出来るだけルキア様が下処理をされたものを使いましょう。

そうでなければ、意味がないのですよね?」

 

 

「慣れてきたものの・・・結構大変ですね。」

「ええ。ですが本当に大変なのは此処からなのです。

固い表皮は数が多いので剥くのが大変ですが、それでもコロリと皮は取れるのです。

ですが・・・・」

「?」

「渋皮を剥くのが、この種類の栗は大変なのですよ。

生の栗は甘藷よりも固いですし、包丁で厚く剥かなくてはなりませんから・・・

本当はルキア様にお怪我をさせてはなりませぬから、あまりお勧めできない作業なのです。」

「・・・・」

「ですが、ルキア様・・・・」

「出来る限り、やってみたいのです。」

「そう仰ると思いました。もう分かっておりますよ。私たちもお止めすることはしませぬから。」

「え・・・・」

「小さめの栗は私たちが処理いたしますから、大きめの剥きやすそうなものを是非に。」

 

「・・・痛っ」

「大丈夫ですかルキア様!!」

「ええ・・・軽く切っただけです。後で鬼道で治せば大丈夫。」

「もう少し厚く、少しずつ剥けば大丈夫ですから。」

「すみません。」

「軽く止血だけしましょうか。

剥き終わったものは少し水に漬けて灰汁を抜きましょう。」

 

 

「これで足りるでしょうか?」

「十分ですよ、ルキア様。

沢山剥いてくださったので、恐らく余るかもしれません。

少しだけ此方の私たちが剥いたものに混ぜても宜しいですか?」

「お願いいたします。」

「ではこちらの栗は私たちのに混ぜて・・・此方の大きな栗は甘露煮にしますね。」

 

「・・・甘露煮の段階で美味しそうだ。」

「でも食べては駄目ですよ、ルキア様。」

「我慢我慢・・・・」

 

「その間に、他の材料の下ごしらえをしましょうね。

材料は普段よりお食事に用いているものばかりですので、奇抜なものは何も御座いません。」

「あとどれ位時間がかかるのでしょうか。」

「下ごしらえさえしてしまえば、後もう少しですよ。」

「喜んでいただけるといいのだが・・・。」

「大丈夫です、きっとお喜びになられますよ。私達が保証いたしますから。」

 

 

 

「おや?・・・今日はとても厨が賑やかですな。」

 

 

 

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