『初めての贈り物』

 

(その4)

 

 

「白哉様、此方はルキア様がお手伝いをされたという栗おこわでございます。」

「何故ルキアが?」

「山で沢山の栗を拾ってこられたとの事、それを料理に用いたと」

「私が聞いているのはそのことではない、何故ルキアが手伝ったのかということだ。」

「それは、ルキア様が手ずから料理を作る必要があったからで御座いましょう。」

 

「清家、お前は何かを知っているのだな。」

「ホ、何を仰りますか白哉様。」

「どうやらその理由というのは、私のみ知らぬようだな。厨の者どもはルキアと共に此れを作ったというのであれば。

理由も知らずに厨の者どもがルキアに炊事などさせるわけがあるまい。」

 

「栗羊羹をお作りになったのですよ、ルキア様は。栗おこわは残りの栗を使ったものですよ。

その栗おこわの一部にも、ルキア様の剥かれた栗が入っているとのことですが、その椀に入っているかどうかまでは分かりませぬ。」

「栗羊羹だと?」

「はい。」

「して、その栗羊羹は何処にあるのだ?後ほど食後に出すつもりであれば先に」

「いえ、白哉様にお出しする予定は御座いませぬ。」

「何だと?」

 

−本当に美味しゅうございますね、ルキア様。

−あの、私まで頂いて良いのでしょうか・・・?

−ええ、ご一緒に召し上がって下さって有り難いのですよ。

−お茶まで淹れて頂いて・・・栗羊羹を差し上げた趣旨からすれば、今日はお茶も清家殿に私が淹れて差し上げるべきなのに。

−お茶くらいは私に淹れさせて下さいな。斯様な爺でも、お茶くらいは淹れられますぞ。

 

−あの、もし宜しければ・・・兄様が昔どんなご様子だったのか、少しずつで良いので・・・伺っても宜しいですか?

−ええ勿論ですとも。ルキア様の存じ上げない白哉様のお姿を沢山お話しましょうかね。

 ルキア様も、現世でのお話を・・・この爺にもお話下さりますか?

 

「では既に羊羹は貴様とルキアの胃の中、ということか。」

「はい。ですが・・・仮に残っていたとしても、白哉様ならば、たとえルキア様お手製のものであったとしても、目下である私からの裾分けなど受けますまい。

ですから、二人で美味しく頂きました。」

「貴様・・・・」

 

栗羊羹の包み紙と・・・ルキア様から栗羊羹に添えられた一筆箋ならば、

手文庫に・・・あの白哉様の似顔絵と共にしまってあるのですが。

 

 

「よぅ、ルキア・・・計画していた栗羊羹は喜んでもらえたのか?」

「ああ、しかも二人で美味しく頂いた。色々な話も聞けて有意義なひと時を過ごすことが出来た。

で、此れは裾分けだ・・・あの栗の残りで作った栗ご飯だ。」

「へぇ、ちゃんと栗の皮を剥けてるじゃねーの。」

「・・・其れは屋敷の者が剥いたやつだ。こっちが私の剥いたもの。」

「・・・うわ、へったくそ!!!!」

「このたわけ者がっ!!」

 

「貴様には でりかしー というものが無いのか???」

「いや悪ぃ・・・。」

「でも味は保証するぞ。何せ兄様が三杯もお替りをしたらしいからな。」

「朽木隊長って、そんなに栗好きだったっけ・・・。」

 

 

 

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