「酔狂な餞」


 

 

「朽木、例のものは用意できたか?」
「ええ、朽木の家に出入りしている菓子舗にお願いして、少し分けていただきました。
此れくらいで足りますか?の葉。」
「多分大丈夫だろう。
場所は、事情を話して・・・一番隊の隊舎の厨房を借りることが出来た。
ある意味、一番勝手が分かるからな。」

「アイツとの約束は果たされなくても、俺たちが出来ることもあるわけだ。」
「そうですね。雀部副隊長と比べたら、まだまだおぼつかないけれども。」


−そんなにお二人が餅がお好きなのでしたら、今度一緒に作ってみましょう。
 も八重がまだ咲き誇る季節ですから、季節はずれというわけでもございませんからね。
−雀部、お前和菓子は得意ではなかったんじゃ・・・。
−ええ、私も雀部副隊長は和風のものを好まれない、と伺ったことがございます。
−好まないだけで、作れないわけでは無いですぞ?
−本当ですか??じゃあ今度作り方を教えてください!!
−ええ、一緒に皆さんで作りましょう。



「では、私がの葉を刻んでおきますから、日番谷隊長は材料を捏ねておいてください。」
「分かった。
朽木、『おーぶん』とかいうヤツは温めておかなくて良いのか?」
「あ、そうでした!!温めないと。」

の葉のみじん切り、こんなもので大丈夫でしょうか。」
「あまり細かいと色がくすんで不味く見えるかもしれねぇ。それくらいでいいんじゃねえか?
アイツは俺たちに対しては細かい事は言わなかったが、アイツが俺たちのために作ってくれたものに関しては・・・

こっちが引く位に見た目にも拘っていたからな。
こんな状況だ、アイツを唸らせるくらいのシロモノ、つくってやろうじゃねぇか。
・・・っていっても、今は唸るどころか、何も語っちゃくれねぇけどな。」
「・・・でも、何だかんだで、傍で私たちのこと・・・やきもきしながら見ていらっしゃるかもしれませんよ。
特に私のみじん切り。
『ああもう危ない!!』って叫ばれていそうな気がして。」
「菓子作ってるときのアイツらしいな、其れは。」

「・・・いいにおいがしてきましたね。」
「うまくいくといいな。」

「あ、おいしそうです!!」
「此れなら及第点くらいはくれるだろうな、雀部も。」



「・・・ム?」

はて、何じゃあれは。
雀部の枕元にあのようなものを置かせたかのぅ・・・。

そういえば、日番谷と朽木のが、炊事場で何やら騒いでおったが・・・。
さてはあ奴らか。

「・・・あの者どもめ、このようなものをこしらえていたとはな。
これは・・・『すこーん』とかいう西洋の菓子か。
しかもの葉の香りがするのぅ。」

枕団子ならぬ、枕『すこーん』とは。
しかも祝いの席でもないのにの葉とは、なんと酔狂な。

 


・・・手紙?


“雀部、約束していた餅を一緒に作れなかったから、俺たちで出来るの菓子をつくった。
見た目は悪いが持って行ってくれ。”
“雀部副隊長、またお菓子作りをご一緒出来るのを楽しみにしていたのに、残念でなりません。
いつか一緒に作ろうと約束してくださった餅を、私たち二人だけでは作れそうに無かったので、

以前作り方を教えていただいた『すこーん』にの葉を入れてみました。
洋菓子だから、きっと雀部副隊長のお口にも合うと思います。
山本総隊長には『などけしからん』と怒られてしまうかもしれませんが・・・・”


「・・・・」


雀部よ、
お主をさげすむ者も星の数ほどおったが、

こうしてお主を慕う者も、ちゃんとおったのだな。

 

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