『日陰の花にはなりたくない』

 

 

 

何故、兄様は私を見てくださらないのか。

何故、私を認めてくださらないのか。

 

何故・・・何故・・・・

 

私は朽木ルキア、護廷十三隊に所属する、れっきとした一人の死神。

私は朽木ルキア、養子であれど、朽木の名を此の小さな背に負う者。

 

私は・・・・

 

私は兄様の着せ替え人形ではない。

私は兄様の愛玩動物でもない。

 

私は、兄様の・・・いったい何なのだろう。

 

モノを与えられれば満足する子どもだとでもお思いか。

それともモノで繋ぎとめることが出来る程度の存在だと。

 

私は、ただ・・・・

 

 

穏やかに陽の光がこの間に射すものだから。

私の苛立ちややるせなさが逆に募る羽目になって。

 

嗚呼、もう耐えられない。

 

ふと、庭の隅を見やればしゃがの花。

薄い紫がこちらをちらりと覗いていた。

 

日陰でそっと花を開くだなんて。

 

「堂々と日の下で花開くこともなく、己の有りの侭も伝えられぬだなんて。

・・・私と、一緒だな。」

 

 

庭に慎ましく咲くしゃがの花。

此の花に何の罪も無いけれど。

 

一輪、引き千切るように摘み取り。

日の当たらぬ文机の上に放り投げた。

 

文机の上には、先程まで八つ当たりをするかのように筆を叩き付けていた半紙。

叩きつけられ萎れたしゃがは、墨に濡れて泣いているようだ。

 

「私はお前のようになるのだけは、御免だ。」

 

風呂敷にわずかばかりの荷物を包み。

それから・・・とあるところに足を伸ばして。

 

「・・・触れてはいけないものというわけでは無いはず。」

 

それを懐に収め、何食わぬ顔で家の門の前へ。

玄関を振り返ることもなく、後ろ髪を引かれる事も無かった。

 

結果的に勘当されたって構わない。

朽木の家から追放されても構わない。

 

ここにずっと居たら、私がおかしくなってしまう。

 

だから私は此処を去る。

貴方の許へは戻らない。

 

私の気が済むまでは。

貴方が気づいてくれるまでは。

 

いっそのこと自由になれるならば、貴方はずっと気づかなくてもいい。

其処まで思ってしまう私は、果たしておかしいのだろうか。

 

「確かに、おかしいな・・・普段ならば意に背くことなど無いに等しいのに。」

 

大きく一つ息を吐き、大きな朽木の門から一歩足を踏み出した。

 

 

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