『Le caprice des grenades~柘榴綺想曲~』
1.ことのはじまり、6この柘榴
「朽木―、お前、柘榴は好きか?」
「柘榴、ですか?」
「いやあ、うちの実家の庭で柘榴が今年は大量に実ってな。
そのうち6個、ここに持ってきたんだ。」
「・・・大好きですし・・・とても懐かしいです。」
「?」
「小さい頃に、皆でこの実をさおに引っ掛けて取ったことが思い出されます。
自然に落ちてくるのを待っていては、鳥に中身を食べられてしまいますから。
阿散井副隊長と、昔・・・この実と副隊長の頭と、どちらが赤いかで喧嘩したこともありました。」
「そうか、じゃあ、これは朽木に全部やろう。みーんな持ってっていいぞ。
どうも小椿も虎鉄も柘榴は食べないらしいんだ。
俺も沢山自力で食べたんだが、もう限界なんだよな・・・。」
「では、ありがたく頂きます!!」
「とはいえ、さすがにこれは私ひとりで食べるには量が多いな。
さて、これをどうするか・・・兄様も甘いものはお気に召さないと聞いた。
そもそもこのようなものを口にはされないだろう。
・・・よし、恋次に少しくれてやろう。きっとあ奴も懐かしがるに違いない!
やはり恋次の頭のほうが、赤いような気がするな。」
「・・・ん?何だルキア、隊長になんか用か?」
「いや、兄様にではなく、お前に用事だ、恋次。」
「??・・・お、俺にかァ?な、何だよ・・・」
「お前にこれをくれてやろうと思ってな。」
「お、柘榴か。なつかしーなオイ!!」
「浮竹隊長のご実家で成ったものらしい。
この通り、沢山頂いたのだ。
・・・この色を見ていたら恋次の頭を思い出してな。」
「・・・お前なぁ・・・ま、いいや。ありがたく頂くぜ。
でもあんまりもらうとガッついているように見えっから、1個でいいや。」
「昔、ザクロを沢山食べ過ぎて腹を壊したことでも思い出したか??」
「・・・う、うるせーな・・・オメーは一言余計なんだよ・・・。」
「あ、隊長、お疲れ様です。」
「・・・・・・」
「どうしたんすか?」
「・・・恋次、それは何だ?」
「何、って・・・柘榴っすけど。
あ、さっきルキアがここに顔を出していって、その時もらったンっすよ。」
「ルキアからだと?」
「ええ、どうやら浮竹隊長の実家で成ったものらしいっす。
俺たち、小さい頃によく採ったもんですよ、こうやって、竿で引っ掛けて・・・
ほんと、その日暮らすのも必死だったってのに、楽しかったなあ、あれは。」
「・・・・・・」
「食べてるときのルキアの顔、口が真っ赤で血だらけに見えて、
俺の髪とルキアの口とどっちが赤いかふざけて比べたこともあったなぁ。最後には喧嘩にもなったんすけどね。
でも本当に、あのときのルキアの顔は・・・今思い出してもそりゃもう!!」
「・・・恋次、口はもういい、手を動かせ。」
「・・・はい、スイマセン・・・。」
-・・・ったく、この人、妹のことになるといつもむすっとするんだよな。
でも、隊長、アンタ甘いモン嫌いだろ?・・・まさかこのザクロ欲しかったのか???-
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