柘榴(2)

 

『Le caprice des grenades~柘榴綺想曲~』

 

2.柘榴のゆくえ
 
 
「あら朽木さん、大きなお荷物ですね?」
「これは卯ノ花隊長!!虎鉄副隊長!!いつもお世話になっております。」
「こんにちは。
・・・その大きなお荷物、どうされたのですか?」
「浮竹隊長から柘榴を頂いて。
沢山頂いたので六番隊の阿散井副隊長に少しお裾分けをしたのですが、
まだこんなにあって・・・」
「まあ。」
「それで、花太郎、いえ、山田七席にもお世話になっているので、おすそ分けしようかと・・・」
「それは残念・・・彼は今日、お休みなのですよ。」
「そうですか・・・
あ、あの・・・もしよろしければ、卯ノ花隊長もいかがでしょうか?
・・・あ、すみません差し出がましいことを。」
「いえ、そんなことないのですよ?
そうですねえ・・・柘榴はとても栄養価が高く、健康にも美容にも効果があるといいます。
薬草の図鑑にも載っているくらいですからね。
・・・朽木さん、もし宜しければ、その柘榴をいただけますか?」
「え、あの・・・よ、宜しいのですか???」
「ええ。是非。美味しくいただきますね?」
「良かったです!!私もこんなに沢山はひとりで食べられないと思っていたところで、
その・・・もらって頂けて、有難うございます!!」
「あら、そんな。こちらこそ、素敵なものを分けていただいて。
勇音、あなたもいかが?」
「虎鉄副隊長もいかがですか??
・・・あ、すみませぬ・・・清音殿も柘榴は食べないと浮竹隊長から伺いました。
やはり苦手でいらっしゃいます、よ・・・ね・・・?」
「・・・ごめんなさい。私も清音と同じで、実は柘榴が苦手で・・・
で、でもっ!!・・・お気持ちだけは有り難く頂きますね??」
「それは残念ね・・・勇音。
とても体にも良くて、美容にも良いのに。」
「(体に逆に良かったら困るんです、これ以上身長が伸びるようなことがあったら・・・)」
「・・・いえ、私のほうこそお気を使わせてしまって申し訳ありません。では。」
 
 
「・・・あら?阿散井副隊長」
「どうも。
四番隊に提出する書類を届けに来ました・・・」
「・・・どこかお加減でも悪いのかしら?なんだかとてもお疲れのようですね。」
「ええ、原因はこれなんスけどね・・・。
怖くて懐に入れておいたけど、潰れてねーよな。」
「まあ、柘榴?」
「・・・朽木隊長がこれを見て、いつも以上にキリキリしてるんっスよ。
なので俺もだんだんこう・・・げんなりしてしまって。」
「この柘榴、どなたから頂いたものかしら?」
「え、これはルキ・・・いえ、十三番隊の朽木からもらったもんっスよ。
ま、これはこれで俺としては懐かしい代物ですし、嬉しいんスけどね。」
「なるほど、そうだったのですか・・・。
阿散井副隊長、柘榴は体にとてもいいんですよ?
今日はできるだけ早めに隊務を切り上げて、その柘榴を召し上がって、
ゆっくり休みましょうね?」
「はい・・・そうします・・・。」
 
 
-なるほど・・・そういうことだったのですね。ならば・・・- 
 
 
 
 
「朽木~っ!!」
「うぼふっ・・・」
「乱菊さん、あなたの胸で朽木さんが潰れますって・・・」
「あっ、ごめーん朽木!!・・・七緒も早く突っ込んでよ。」
「・・・いえ、だ、大丈夫です・・・何でしょうか・・・?」
「今、用があって四番隊にいったら、朽木がすごく美容にいい物を沢山持ってるんだって、卯ノ花隊長から聞いたのよ~!!
ねえねえ、何を持ってるの???」
「え、っと・・・柘榴なんですけれど・・・浮竹隊長のご実家で採れたそうなのです。」
「へ~、柘榴かぁ・・・懐かしいわねぇ。
ねえ朽木、これ、私にも分けてもらえない?ね?お願いっ!!
美容に良い、なんて聞いたらねえ~?」
「ええ・・・宜しければ是非。」
「本当???有難う朽木~!!」
「・・・く、苦しいです松本副隊長・・・」
「だから乱菊さん!!・・・朽木さん、大丈夫・・・?」
「はい、大丈夫です・・・伊勢副隊長も、是非いかがですか?」
「私もいいのですか?・・・そうだ、もう一つ頂いてもいいですか?」
「なーにー七緒、一人で2個も食べるの~??」
「違います!!雛森さんに持って行こうと思っただけです。」
「雛森副隊長にですか・・・そうですね、ぜひお持ちください。
体にも良いと先ほど卯ノ花隊長から伺ったのです。」
「本当?助かります。でも朽木さんの分は大丈夫?」
「私のは、ここに1個まだ残っていますから。」
「え、あ・・・そう、ですか?・・・では、遠慮なく頂いて行きますね?」
 
 
 
「わー、るっきーだ~!!」
「わっわわわわわ・・・草鹿副隊長!!」
「くんくんくん・・・るっきー、甘い匂いするね?」
「あ、これですか?・・・柘榴なんです。」
「わぁ、まっかっか・・・血みたい。きれい~。剣ちゃんが見たらびっくりするよ~」
「食べると甘酸っぱくて美味しいんですよ?」
「ほんと~??
・・・ねえ、るっきー、これちょうだい?」
「え、これですか??」
「・・・だめぇ?」
「・・・むぅ・・・・・・わかりました、
では、これは草鹿服隊長に差し上げましょう。」
「わぁ~い!!ざくろざくろざっくろ~!!」
「体にもとても良いそうなので、更木隊長や・・・
そうそう、美容にも良いそうなので、綾瀬川五席もお喜びになるかもしれませんね。」
「じゃあゆみちーにもおしえてあげよーっと。
ありがとうるっきー!!じゃーねーっ!!」
 
 
―・・・結局、残ったのは柘榴を包んでいた風呂敷のみ、か・・・。
 まあよい、明日浮竹隊長には『皆さん嬉しそうにお持ち下さった』とお伝えしよう。
 それはそれで、きっと浮竹隊長もお喜びになられる。―

 

 

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