柘榴(3)-1
 
 
『Le caprice des grenades~柘榴綺想曲~』

 
3. 7個目の柘榴、半分ずつの柘榴(前編)
 

「ただいま戻りました。・・・あ、清家殿・・・」
「これはこれは、おかえりなさいませルキア様。
・・・白哉様が裏庭の入り口にてお待ちでございます。
お着替えをお済ませになられたら、是非裏庭の入り口までお越しくださいませ。」
「・・・兄様が・・・?」
 
「兄様、お待たせいたしまし・・・・な、何事ですか兄様!!」
「・・ルキア、柘榴はどうした?」
「え、あの・・・皆様におすそ分けをしたら、その・・・
自分の分も差し上げてしまったのです。」
「そうか。」
「・・・って兄様、しかし、なぜ兄様が柘榴のことを・・・?
しかも一体なにがあったのですか?そのお姿といい・・・」
「私が袴姿でたすきがけをして袖を捲くるのがそれほどおかしいか?」
「いえ、そうではなくて、何で先を削った竹竿なんてお持ちで???」
「いずれ分かることだ。」
「ですが、そんな竹竿など兄様がお持ちになるなんて・・・私がお持ちいたします!!」
「無用だ。私について来い」
「え、えぇ・・・?」
 
「・・・これは・・・」
「柘榴の木だ。見て分からぬか?」
「はい、みれば分かります・・・ですが・・・」
「この裏庭には、薬効のある植物を多く植えてあるのだ。この柘榴も数代も前から植えられている。
・・・竿で自分で取ってみるか?昔やったことがあるのだろう?」
「え、あ・・・はい、ですが・・・」
「やってみるがいい。」
 
 
-ガサガサ、バサ・・・・
-・・・ぐらっ

 
「あっ・・・」
「・・・!!」

 
 
-・・・ドサっ!!・・・

 
「・・・あ、れ・・・?痛くない・・・」
「・・・ルキア、」
「わ!!・・・兄様!!
・・・大丈夫ですか???お怪我はありませぬか???」
「お前は昔からそのように危なっかしかったのか?」
「い、いえ、・・・そのようなことは・・・」
「身体の身のこなしも戦いの基本、このような遊びごときでお前は・・・」
「も、申し訳ありません!!・・・」
「構わぬ・・・が、ルキア、いい加減私の膝から降りろ。
お前はいつまで私を、お前の座布団代わりにするつもりなのだ?」
「(ひぃぃぃぃぃーっ!!!)」
 
 
 
「やはり、私がおらぬと心許無い。竿の重さに負けてよろけるとは。」
「・・・申し訳ありませぬ。
いつも鍛錬は欠かさぬようにしておりますが、竿で柘榴を取ったことなどは、
もうずいぶん前の話ですし、勝手が違うゆえ・・・」
「その挙句が、私を巻き添えにし、仕舞いには私を座布団にする、と?」
「本当に申し訳ありませぬ!!!」
「もう良い・・・竿を貸してみるがよい。」
 

 
-ざわざわ・・・、ぱき・・・
-・・・ふわ・・・

 
「うわぁ・・・すごいです兄様!!
こんなに大きな柘榴、初めて見ました!!私の手よりも大きいなんて!!」
「食してみるか?」
「・・・え、ここで、ですか・・・?」
「そうだ。」
「ですがここでは・・・それに兄様のお手やお召し物が汚れてしまうかもしれませぬ。」
「構わぬ。もう先程、お前が私を座布団にした際に汚れておる。」
「・・・・」
「・・・私がここで半分食するゆえ、お前もここで半分食するがいい。
お前も昔、このようにしてその場で食したことがあるのだろう。」
「兄様・・・?」
「その柘榴を貸せ」
「あ、はい・・・」
 
 
-・・・パキッ・・・

 
「ルキア、手を出せ・・・お前の分はこちらだ。」
「・・・兄様、私の分の柘榴が大きいのでは無いですか?
そんな兄様に小さい柘榴の側など・・・」
「柘榴の大小で不平をこぼすほど、私は子供ではない。」
「・・・すみませぬ。私の考えが及びませんでした・・・
ですが、本当にここで、ですか?」
「・・・二言は言わぬ。」 
 
 
「・・・・・・」
「あの、兄様・・・?お口に合わなかったでしょうか・・・?」
「成程、確かに血のように赤い。
とりわけ甘いという訳ではないが・・・素朴な味だな。」
「・・・そう、ですか・・・・」
 
 


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