『思いを繋ぐ白布の花に~それはまるで神話のような~』
(叶わぬ願い、変わらぬ思い)
・・・姉様、
きれいな花をつける木があるのですね。
こんろんか、というのだと兄様が教えてくれました。
きれいな花・・・1枚だけ、花びらが白くて大きいのです。
本当は、花びらではないらしいのですが、それでもその姿は清らかな花のようです。
姉様も、きっとご覧になられていたのでしょうね・・・。
・・・まるで、美しい緑の上で、真っ白な布が風にはためいているようです。
・・・日の光をやわらかく受け止め、ひときわ白く輝く姿は絹みたいです。
私が今ここにこうしていられるのは、姉様のお陰だと・・・兄様から伺いました。
姉様は、幼い頃に生き別れた私をずっと探していてくれたのだと。
毎日のように探し続け、そして影で私をあの街に置き去りにしたことを
悔いながら、涙を流されていたのだ、と・・・。
いつか私の手を再び取ることができることを信じ、
私を迎えるときに余計な詮索と非難が私に降りかからぬようにと、
ご自分をひどく律しておられたことも。
そして最期の時まで、私の身を案じていてくださった。
兄様に、私を探して欲しいとおっしゃってくださった。
・・・私のことを、託してくださった。
本来であればつながることの無い点と点を、繋いだのは、姉様、あなたでした。
私と兄様を「家族」という絆で繋いでくださったのは・・・
・・・私は、ひとり、なんかじゃなかった!!
姉様、もしも叶うならば、
この花のように美しい白布で、
影でぬぐわれていただろう姉様の涙をぬぐって差し上げたい。
そして、私はここにいます、と、姉様にお伝えしたい。
姉様・・・と、何度でもお呼びしたい。
ご自分を律されていた姉様に、少しでも和やかな時間を差し上げることができるなら・・・。
決して叶わぬ願いだからこそ、
せめて、私の心の中でだけでも、姉様をいたわって差し上げたいのです。
なぜなら、あなたがどんなに否定しようと、あなたは私の姉様。
・・・私の、大切な「家族」だから・・・。
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