こんろんか(2)
『思いを繋ぐ白布の花に~それはまるで神話のような~』
 
 
 
(永久の想いよ、どうか届いて・・・)
 
 
白哉様、
どうか、あの子をお守りください。
あの子には何も罪はないのです。そう、何も・・・。
 
 
白哉様と穏やかなときを共にすごすたびに、
また、この世界に在る美しいものを白哉様から教えていただくたびに、
私の心は痛みます。
罪の無い妹は、このような美しいものを知ることも出来ず、苦しみの中で
今なお、もがき続けているのではないか、と・・・。
 
 
白哉様から、「珍しい花がある」とコンロンカを見せていただいたとき、
その愛らしさについ頬を緩めてしまいました。
その小さな白花は、まるで幼子が手にするような白布のようで。
黄色い星のような花も、まるで幼子が絵に描くような可愛らしい姿で。
・・・ですから、つい・・・また・・・あの子を思いだしてしまって。
 
 
涙をためてしまった私の目を、いつもぬぐって下さった白哉様・・・
今度は、どうか、私の妹の涙をぬぐってやってください。
 
 
・・・私には時間が残されておりません。
恐らく、私の手で妹を見つけ出し、あの小さな手をもう一度とってあげることは
出来ないのでしょう。
あの子の涙をこの手でぬぐってあげたくても・・・叶わないのでしょう。
それが私に対する罰であるならば、私は甘んじて受けましょう。
ですが・・・あの子には何の罪もないのです。そう、何も・・・。
 
 
一度は一人で二人を抱えて生きることの辛さに棄ててしまった妹・・・
けれど、あの子がいるからこそ、きっと生きていると信じられたからこそ、
私はいつかまたあの子とめぐり合えると信じて必死で生き抜き・・・
・・・そして、白哉様と巡り会うことができたのでしょう。
 
 
あの子が、いてくれたから・・・。
 
 
たとえ・・・この世界での私の命が尽き、私の瞳が闇に閉ざされようとも、
私の思いが、せめて、時の移ろいに乱されること無く、永久に同じままで
あの子の傍に寄り添い、暖かな陽だまりのようにあの子を包み込めたならば・・・。
 
 
そして、その思いを、
姉と呼ばれる資格はなくとも、あの子に伝えることができるならば・・・
 
 
 
白哉様、
どうか、あの子を護ってやってください。
私はあの子から姉と呼ばれる資格はございません。ですが、
・・・妹を思う気持ちは、資格が無くとも、決して変わりはございません。
そのような愚かな私と、いとおしいあの子とを繋いでくださる力をお持ちなのは、
・・・白哉様、この世界であなただけ、たった一人なのでございます。
 
 
どうか、愚かな姉の思いを、あの子に届けてやってください。
・・・許して欲しい、と。
そして何よりも、幸せになってほしい、と。
私が白哉様と共に過ごすことのできた幸せなときを、どうかあの子にも・・・
白哉様、あなたの手で、与えてやってください。
あの子に、あなたを、兄と呼ばせてやってください・・・
あなたは一人ではないのだ、と・・・
 
 
 
-最後まで、甘えてばかりでごめんなさい・・・
  ・・・白哉様と過ごしたこの五年、緋真は夢のようでございました・・・

 

 

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