・・・思い返せば、年明けからルキアは体調を崩していた。
恐らくは年始からの様々な行事で心身ともに疲れきっていたのだろう。
あの娘は、常に気を張って「朽木家」の名に恥じぬようにと振舞っているのだから。
 
 
 
現世では非常に感染力の強い病が流行っているのだと聞いた。
その病で命を落とした者が流魂街にも多数やってきていると聞く。
 
 
・・・まさかルキアまでもが、この世界でその病に罹るとは。
病の床に横たわるその姿は痛々しいものだった。
この家の侍医や使用人から、私に病がうつらぬ様に、義妹の部屋に立ち入ることを控えて欲しいと請われた。
もっとも、それをまともに聞く私ではないことは分かっていたようで、せめて口元を覆って欲しいと清家に請われた。
 
 
私は口元を隠密機動のように布で覆い、ルキアの枕元に座る。
ふと、文机の上に置かれた新しい暦を眺めた。
私の誕生日である睦月の三十一日には、大きな兎の絵が描かれていた。
 
・・・だが、
 
 
―・・・お前の生まれた日は、空欄のまま、か・・・。
 
 
 
この娘の誕生日頃までに熱が下がらなければ、覚悟をして欲しいと侍医に告げられた。
空欄の日付がまるで暗示でもしているかのようで、
私は内に湧いた悪い予感を振り払うかのように・・・いや、突きつけられた現実から逃げるかのように
 
この娘の傍を、後にした。
 
 
 

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