「・・・兄様、お加減は如何ですか?」
数日前から、今度は私がルキアが罹った病をもらってきてしまったようだ。
私のほうが若干症状が軽いとはいえ、ルキア、お前はこれほどまでに
辛い思いをしていたのか・・・・
このような具合だったのならば、あの時・・・熱が下がったとはいえ、
もう少し療養させるべきであったな・・・
「ルキア、お前がここにいては私の病がうつるぞ?下がっておれ。
大体、今日はお前は勤務の日だろう?」
「いえ、大丈夫です。一度この病に罹った者は、少なくとも数年は再度かかる可能性が
低くなるそうなのです。免疫、というものらしいのですが。
ですから、私が兄様からうつる可能性はとても低いのです。」
「それで、お前はこうして私の傍で世話をしているということか」
「ええ、屋敷の皆さんにうつっては、大変なことになってしまいますから。
清家殿にきちんと話して許可を頂きました。」
「そうか・・・」
「浮竹隊長にも事情を話してお休みを頂いたら、なぜか小声で『羨ましい』とか仰ってましたが・・・
でも隊長があの病に罹ったら確実にお亡くなりになりますよ?と申し上げました。」
「確かに、お前や私よりは、浮竹のほうが命に関わるやも知れぬな」
「でも、兄様・・・」
「何だ?」
「あの時、ご一緒にお誕生日を祝えて、ある意味、結果的には、その、良かったのでしょうか・・・?」
「・・・かも知れぬな。」
私はルキアから白がゆを受け取りながら、そういった。
確かに、今日祝えなくても、結果的にはよかったのやも知れぬ。
余計な客人を招く必要がないだの、堅苦しい祝いをしなくてもよいだの、と言った理由ではない。
一番祝いたかったお前の誕生日を共に祝うことができ、
一番祝って欲しかったお前だけに誕生日を祝ってもらえたのだ。
・・・そして何より、お前が此処でこうしていてくれるのだ。
私が願った通りに。
あの何も無いはずであった平凡な二日間は、重ならずとも隣り合った特別な日々になった。
私とお前の誕生日の間を数えていっても、確かに重なる事はない。
・・・しかし、重なれば『特別』な『中間の日』はたった一日のみ。
隣り合うが故に、倍の喜びもあろう。
何より・・・暦こそ重なっておらぬが、互いの心の内は、前よりも重なっているように感じるのだ。
それはきっと私だけが思うことではあるまい、そう信じたい。
睦月の二十二日が、互いの間に在った溝を埋め、心が重なり合えた日であるならば、
睦月の二十三日は、其の事を互いに慶び、尊ぶ日。
やはり、隣り合って、二つ揃ってこそ、意味をなすのやも知れぬ。
「・・・兄様、ゆっくりお休みになってくださいね。
それが良くなる一番の近道ですから。」
「・・・ルキア、」
「・・・ご安心ください・・・私は、ここにおりますから。」
ー・・・そうだったな。
・・・ルキアと共に過ごしたあの『中間の日』のことを思い出しながら、
ルキアに支えてもらいつつ床に横になった。
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