『若き青松よ』
あの立派な大樹となった赤松も、
あの断崖の老いた黒松も、
あの峰に生きる五葉松も、
・・・全ては、たった一つの『芽吹き』という
小さな小さな『一歩』から始まってんだ。
幾度も其の柔き葉を風に煽られ、
幾度も其のしなやかな枝で雨雪を受け止め、
幾度も其のか細い根で己の体を支え抜き、
・・・そうして、今に至っている。
お前はこれからどう在りてぇのか。
何を望むのか。
其の為にお前が成すべき事は何なのか。
・・・その解を導き出すのは簡単なもんじゃねェよ。
お前はまだまだ子どもで、自分の足で『一歩』を踏み出したつもりでも
実は一歩を踏み出すどころか、単に『その場』で踊らされているときもある。
お前が抱いた『信念』っつーヤツが、
紛い物で格好ばかりで中身の無いモンだった場合、とくにそうなる可能性が高けぇ。
・・・それが若さ、ってモンかも知れねぇが。
ま、
若さゆえの過ちもあるだろう。
過ちゆえの悔いもあるだろう。
悔いゆえのためらいもあるだろう。
けどな、そんな過ちや悔いやためらいっつーのは、
お前が歩む邪魔をする足枷にも、
お前を絡めとる柵にも、
お前を捕らえる網にも縄にも鎖にもなりゃしねぇんだよ。
それどころか、
本当にお前が中身のある『信念』を抱いたときには、
其処から生まれてくるモンは半端ねぇ力を持つんだよな。
その『信念』を後押しするに足りるだけの、いやそれ以上の力をな。
やがてお前も知るときが来る、
お前の内に生じた信念はやがて叶えるべき希望を導き出す。
お前の内に生じた希望はやがて叶えようとする勇気を湧き出でさせる。
お前の内に生じた勇気はやがて叶えるための最初の『一歩』を踏ませる力になる。
『その場』から踏み出す、何かを生じさせる、動かす、変える
そんな『一歩』を。
そうだな、
・・・全ては、小さな小さな『一歩』から始まるもんだ。
天にその幹を伸ばし、濃緑の葉を広げる黒松も、
高嶺の空を仰ぎ、無骨な岩肌を包むように広がる這い松も、
・・・そして、己の在り方に揺れる若き青松みてーな、お前も。
その場に漫然と留まっているようなモンには、後先なんてものもねぇし。
だから、色んなモンに対して、
いちいち怖がるな、ためらうな、くよくよすんな。
お前が今求めるべきものを求めりゃいい。
お前が今信じるに足りるものを信じりゃいい。
お前が今護るべきものを護り抜きゃいい。
その若さ故の力を信じ、内にある勇気を信じ、
其の先に、お前の思い描いた姿がそこにあると信じながら、
ためらうことなく踏み出しゃいいんだ。
・・・大樹に至るための、その小さな『一歩』を。
・・・お前が抱く信念を貫き通すための、その小さな『一歩』を。
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