『 重陽の花 ~ 一番隊の昼下がり ~ 』
「失礼致します!!十三番隊朽木ルキア、浮竹隊長からの書簡をお持ち致しました。」
「おや、此れは朽木君」
「こんにちは雀部副隊長。十三番隊より書簡をお持ち致しました。」
「ご苦労様。
そうそう、朽木君・・・お時間は御有りかな?」
「え、はい・・・」
「もしも宜しければ、是非試して頂きたいものがあるのですよ。」
「??」
「さ、そちらの「ソファー」に座ってお待ち下され。」
「はい・・・あれ?日番谷隊長・・・」
「朽木、お前も捕まったのか。」
「え、あの・・・いまいち状況をつかめては居ないのですが。」
「雀部副隊長が、紅茶に合う菓子を研究していて、作ってみたんだと。」
「お菓子、ですか?」
「で、それを是非試して欲しいってさ・・・。
俺、菓子は浮竹に大量に押し付けられてるから、もう沢山なんだが・・・。」
「さ、お二人ともお待たせ致しましたな。私が作ってみたのですよ。」
「うわぁ、綺麗なお菓子ですね!!」
「私、紅茶も好きなのですが・・・紅茶に合うお菓子を考えるのもの好きなものですから。」
「あの・・・この綺麗な色は何ですか??」
「朽木君、流石に目の付け所が素晴らしい。
其れはですね、何と・・・食用菊なのですよ!!」
「え???????」
「何???????」
「おや?流石の日番谷隊長も驚かれましたか?作った甲斐がありますな。」
「いや、菊っつーのは、食えるやつは普通黄色だろ???」
「あの、私も・・・三杯酢で食事に出るものは、黄色いものしか記憶がないのですが。」
「実はですね、こういった紫がかった桃色の菊もあるのですよ。」
「へぇ・・・そうなのですか!!」
「ですが、こんなに綺麗な色ですから・・・三杯酢だけでは勿体無いと思ったのですよ。
もうじき重陽の節句ですから、菊は季節柄とてもぴったりな花ですし。
そこで、私・・・紅茶に合うような御菓子に使えないものか、と。
お酢の変わりにレモンの汁で鮮やかに発色させてみたのです。」
「それでこのような御菓子になっているのですね。」
「ですが山本総隊長は洋風なものを得意とされないものですから、
お菓子を勧めることも、感想を伺うことも出来なくて・・・。」
「それで、私達に?」
「ええ、是非食していただき、感想を伺えたら・・・。」
「そういうご事情なら・・・是非!!」
「仕方ねーな。
浮竹の押し付けてくる菓子みたいな子どもじみた菓子でもねーし、量も少ねぇし。」
「あの、ちなみに・・・此れはどういった種類のお菓子なのですか?
雀部副隊長は洋風の文化にお詳しいと伺っておりますが、これも洋風のお菓子なのですか?」
「ええ。それは「ムース」ですよ。
レモンが加わっているので、ちょっと『チーズケーキ』のような、『ヨーグルト』のような風味になってますよ。」
「む、「むーす」・・・ですか?
さて、現世でも売っていたのだろうか・・・」
「ええ、恐らくは現世の洋菓子屋、という処では売られているものですよ。
・・・今、紅茶を淹れて来ますから、先に是非どうぞ。
ご感想も教えてくだされ。」
「・・・そんなに甘くもねーし、不味くはねえな。」
「そうですね。さっぱりしていて、とてもおいし」
「うわぁぁぁ、何ということか私としたことがァーーー!!」
「・・・あの、雀部副隊長・・・?」
「どうしたんだ雀部、開けるぞ・・・」
「・・・嗚呼、私としたことが・・・
お二人に紅茶を淹れて差し上げようとしたのですが、よりによって切らしておりました。
何という失態でしょうか!!!!」
「おい、雀部、気にすんな。充分俺達はもてなしてもらってるから・・・」
「そうですよ雀部副隊長。私達は充分に」
「・・・騒がしいのぅ、一体何をしておるのじゃ。」
「・・・山本総隊長!!!」
「ふむ、ということは、飲みものを出せばよいのじゃな。」
「・・・・」
「ならば、このワシが手ずから此の者らに抹茶を点てて進ぜようかのぅ。」
「しかし・・・紅茶に合うような洋菓子を創作してみたので、」
「雀部、お主、何が不服じゃ?」
「・・・・・・」
「さ、ワシの点てた茶も楽しむが良い。こういう機会は早々無いぞ?」
「・・・あれ?」
「どうしたのじゃ?」
「美味しい・・・
総隊長、雀部副隊長、これ・・・お抹茶と、この「むーす」、合います!!!」
「何と??」
「確かに、コレ、そんなに甘くねーし、菊が少しほろ苦いけれどひどいクセもないから
洋菓子なんだろうけれども抹茶と合うかもしれねーな。」
「はい、ぴったりなんです!!
色も、抹茶の緑と菊のピンクと白がとても綺麗で・・・目でも楽しめますね!!」
「はぁ、そうですか・・・?」
「分かりました!!
・・・これが現世で言うところの『こらぼれーしょん』なんですね!!
山本総隊長、この「むーす」とお抹茶を合わせて『こらぼれーしょん』するなんて、
流石現世のことにも通じていらっしゃる!!」
「フォッフォッフォッ・・・ワシはお主らよりも長く生きとるからのぅ。」
「(・・・まぁ、これはこれで良いのかもしれませんね・・・・)」
「山本総隊長、雀部副隊長、いい物を頂いた。」
「いえいえ・・・とんだ失態を見せてしまい、恥ずかしい限りですぞ。」
「そんな・・・。
でも本当に・・・先ほどのお菓子、とっても美味しくて色も綺麗で、きっと紅茶とも合うと思います。
ですが、総隊長の点てて下さったお抹茶と本当にぴったりで・・・。
まるで先ほどのお抹茶と「むーす」は、総隊長と副隊長のようだな、と。」
「ワシと雀部のようじゃと?」
「総隊長と副隊長は好むものが正反対なのに、常にご一緒で息がぴったりと合っていて・・・
先ほど頂いたお菓子とお茶も、洋風と和風で正反対なのに、とっても調和していたから、
・・・あ、すみません、出すぎたことを。」
「それ程までに気に入っていただけたのならば、作った甲斐がありますぞ。」
「ワシも茶を点てた甲斐があるというものじゃ。」
「しかし・・・あの朽木の、面白いことを言うのぅ。」
「?」
「ワシとお主が、あの茶と茶菓子のようだ、と。
よほどお主の作った洋菓子とやらと、ワシの点てた抹茶が調和したのじゃろうな。
・・・ま、ワシは洋物は得意とせんがの。されど、悪い気はせんな。」
「・・・・」
「たまには孫のようなあ奴らの喜ぶ顔も、いいもんじゃ。
ワシもまだまだあ奴らになぞ負けていられないのぅ!!」
「そうですね。」
すみません、孫を増やそうとしましたが、挫折しました。。。
文章がどんどんあらぬ方向へ行ってしまったので、この作品はこのままで。