『こまむら日記』 ~幼稚園での日々を綴る~



●月×日  天気 雨のち曇り


今日は久しぶりにハリー・ベル先生が『せいれいてい幼稚園』に顔を出された。
話によると異動されてからの経過報告を山本理事長にされたらしい。
色々とドタバタしながらも、それでも充実した日々を送られているそうで何よりだと思う。
そして、あちらの『うぇこむんど幼稚園』で一緒に園児たちを指導されているゾマリ先生の『お手製カボチャクッキー』をお土産に持ってきてくださった。
もちろんお手製なので添加物も一切なし、甘さも控えめ、素材にもこだわっていて、食べる人の身になって作られた・・・万人への『愛』の込められたクッキーだとか。
(話に依れば、あちらの幼稚園で出されるおやつは、全てゾマリ先生の手作りらしい。)

たまたま朽木先生(と、お姉さんと一緒に帰る予定の白哉くん)が職員室に戻ってきたので、初めて顔を合わせるハリー・ベル先生と挨拶もしてもらったのだが、その際に朽木先生と白哉くんにもカボチャクッキーを勧めてみた。
朽木先生には「とても美味しい、私も作ってみたい」と評判だったのだが、白哉くんは口を結んだまま絶対に開こうとはしなかった。
どうやら朽木先生の話によると、白哉くんはカボチャにトラウマがあるらしく・・・朽木先生が好き嫌いを何とか直そうとしているようなのだが、いっこうにカボチャにだけは口を開かないらしい。
カボチャにまつわる、何か余程嫌なことでもあったのだろうか・・・?
ゾマリ先生の万人に向けられた『愛』も、白哉くんにはどうやら通用しないようだ。


●月△日  天気 雪


職員室できんせんか組の吉良先生が机に突っ伏して落ち込んでいた。
何があったのかと尋ねると「園児にからかわれました・・・」と半泣きだったので、詳しく話を聞いてみると、どうやらクラスの市丸くんが自宅で作っていた干し柿をお土産として持ってきたらしい。
しかし吉良先生は干し柿が大の苦手なのだとか。
「ギンくん、僕が干し柿苦手なのを知ってて持ってきたんです・・・。
『先生にお土産や~』って言って、その袋を渡されて、中身を見て・・・僕、園児達の前で大声を上げて腰を抜かして引っくり返ってしまいました。
案の定、ギンくんは笑っていて・・・『な?せんせは干し柿苦手なんや。腰ぬかしたやろ?』って・・・。」
こんなので僕は幼稚園の先生としてやっていけるんでしょうか・・・と、かなり落ち込んでいた。
細やかな感性の持ち主であり機微を察する力のある吉良先生には、もっと自信をもって指導ができるようになってほしいのだが、今はこの落ち込みっぷりから立ち直ってもらわなくては。
まだまだ若い先生だ、これからもっと色々なことを経験するのだから。

しかし・・・確かに市丸くんは少々度の過ぎたいたづらをすることがあるようだ。
その度に幼馴染であり同じクラスの乱菊ちゃんに怒られているようであるが、効き目はあまりないらしい。
少々行く末が心配な園児では、ある。


●月☆日  天気 曇りのち晴れ


今日はお昼休みに年中クラスの一護くんと恋次くんが園庭で大喧嘩をしていた。
理由は、『どっちが強いか』という、よくある子ども達の力比べのようなものだ。
(当初は何やら『ばんかい!!』とか叫びながら、単に新聞紙を丸めてつくった刀でチャンバラごっこをしていたらしい。)
しかし、そのあまりの暴れっぷりに、発見者の朽木先生もおろおろするばかりだったそうだ。
だが急を聞きつけてやってきた浮竹先生に二人ともひょいと両脇に抱え挙げられ、職員室では卯ノ花先生から傷の手当を受けながらお灸を据えられてしゅんとする姿は、まだまだ可愛いものである。
朽木先生は「まだまだ私では力不足なんですよね・・・」と落ち込んでいたが、浮竹先生によれば取っ組み合いの大喧嘩だったようで、朽木先生が無理にでも止めようとしたら逆に怪我をしていたのではないか、とのこと。
「まぁ、朽木が怪我をしたら、それはそれであの子たちにも心の傷が残るんだろうから、俺が止めたのは間違いじゃなかった、と思いますよ。」と笑っていた。
これぞベテランの余裕、といったものであろうか。

 

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