柘榴(4)-1

 

『Le caprice des grenades~柘榴綺想曲~』

 

4.それぞれの柘榴、夕焼けに思うこと(前編)

 
「しっかし、まぁ、あの白哉が柘榴ごときでここに押しかけるなんて。
・・・冷静になって考えれば、多分自分ちにもあるだろうに。
柘榴の木くらい。」
 
―浮竹、話がある。
―お、白哉じゃないか!!どうしたんだ??
―家の者にお前のところで採れた柘榴を与えたと聞いたが?
―ああ、そのことか。
 実家で採れた柘榴が沢山あったから、朽木に持っていってもらったんだ。
 白哉も柘榴欲しかったのか?
 残念ながらもう残っていないんだ。
―私は甘いものなど口にはせぬ。
 大体、なぜお前はそうやって私の家の者に下らぬものを・・・
―おいおい、いくら不機嫌だからって「下らない」なんて酷いことを言うなあ。
 そんなに食べたかったんなら、帰ってから朽木からもらえばいいじゃないか?
 6こも持ってってもらったんだ、途中でお裾分けしたって
 2、3個くらいは残るんじゃないか?
―言った筈だ。兄から与えられるものなど、口になどせぬ。
―じゃあなんで俺にわざわざ柘榴の話をしにここまで来たんだ?
 何か柘榴がらみでお前の気に障ることでもあったのか?
―兄には、関係ない。
―ここまで押しかけておいてそれかよ。お前は一体何なんだ???

-・・・あのな、白哉、
 そんなに欲しかったら、自分で採ればいいじゃないか。
 お前の家なら、柘榴くらい植えてあるんじゃないか?
 それこそ、朽木と一緒に採るのなんかどうだ?
 俺も以前は、兄弟みんなで柘榴を採ったもんだよ。
―この私が?柘榴を手づから採る、と?
―まあそんなことがあってもいいんじゃないか?
 朽木は柘榴が好きそうだし、とても懐かしそうな、嬉しそうな顔をしていたぞ?
 お前も一緒に採ってみたらどうだ?いい思い出にもなるだろ、今まで色々あった分。
 そんなに難しいことはないさ。
 さすがに四楓院みたいに木に登るのはやめたほうがいいな。棘があるからなぁ。
 そうそう、竹竿の先を少し削って切れ込みを作って、そこに枝を引っ掛けてだな・・・
―・・・失礼する。
―・・・っておい!!白哉!!
 ・・・アイツは相変わらず人の話を聞かないな。
 
「・・・ま、それはそれで、いいのかもしれないな。
 溝を埋めるには、アイツが朽木の目線に立ってみるのもアリだもんな、きっと。
 分かってはいるんだけどな、
 ・・・白哉が柘榴が欲しくて来た訳じゃないということくらい。
 俺くらいにしか、あんなに口に出して八つ当たりも出来ないんだろう、きっと。
 
 ・・・とはいえ、・・・卯ノ花隊長には、敵わないな。あの人は策士だ。
 本当に白哉、来たもんなぁ。」
 
 
 
-先程朽木さんに差し上げられた柘榴、大変申し訳ないのですが・・・
 私のほうで、ほとんど全て頂いても宜しいでしょうか?
 ・・・実は、
 どうやら阿散井副隊長にルキアさんが差し上げた柘榴に対して、
 朽木隊長があまりよい顔をされていらっしゃらないようで。
 ですが、どうやら柘榴を差し上げたことに対してではなくて、
 阿散井副隊長がルキアさんとの思い出話をし始めてから、のようですよ?
 柘榴自体が原因とは言いがたいのですが、あの朽木隊長のことですから、
 このまま浮竹隊長の柘榴を彼女が屋敷まで持ち帰った場合、どうなることやら。
 
-せっかくのこういう機会ですから、逆手にとって・・・
 たまには朽木隊長もにも、ルキアさんとの溝を埋めていただくために
 動いていただいたほうが・・・きっと、と思ったのですよ。

-ですので、わたくしはルキアさんの柘榴を全て頂くように計を図りますので、
 浮竹隊長には、もしも朽木隊長がそちらにいらっしゃったならば、
 なにか朽木隊長がご自身でもされそうなことを提案してみて頂けませんか?
 ・・・たとえば、自分で採ったらどうか、などといったことを。
 もちろん、こちらで頂いた浮竹隊長の柘榴は、美味しく頂きますから。そこはご安心を。
 
―このようなとき、原因である柘榴を差し上げた浮竹隊長のところに
 朽木隊長は向かわれそうな気がするのですよ。
 ・・・ですので、薦める役は浮竹隊長が一番ではないか、と思うのです。
 あなたの言うことなら、皮肉を交えながらも、耳を傾けそうな気が致します。
 
 
 

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