私はルキアの部屋へと足を踏み入れる。
ルキアは私に気付き、体を起こそうとしたので、私は手でそれを制した。
枕元に座った私の口から飛び出したのは、労りの言葉ではなく・・・
「・・・お前は一体何をしているのだ。」
「申し訳ありませぬ・・・全ては私の情けなさゆえ。」
「・・・何故、無理をする?」
「無理など、しておりませぬ・・・本来であれば、これくらいのこと、」
「今まさに『これくらいのこと』が出来ぬのであろう?
それをわきまえずに尚も己を過信し、為そうとするのが『無理』と言うもの。」
「申し訳ありませぬ・・・」
・・・私は、お前にこのようなことを告げたくて、ここに来たのではない。
私が今日、告げたかったのは・・・
「・・・これでは・・・お前の生まれた日をずっと祝えぬでは無いか・・・・」
私の手は自然と伸び、力なく床に横たわるルキアの、その小さな頭を撫でていた。
一瞬だけびくりとしたものの、ルキアは為されるがままに頭を撫でられていた。
口には出さなかったが、手のひらから伝わる温もりが、いとおしかった・・・。
嗚呼、この娘はとりあえずあの病からは助かったのだ、生きているのだ、と
改めて私に伝えてくれる。
この娘の誕生日を祝うことは、この娘の為だけではなく、私の為でもあろう。
只ルキアの喜ぶ姿を見たい、笑うところを見たい、純粋に祝ってやりたい・・・
愚かしいと笑われるやも知れぬが、これもまた私の願いなのだ。
・・・思えば、ここにこの娘がこうしていてくれる、
それだけのことを、つい先日まで、あれほどまでに願っていたのに、
更に願いを懐くなどとは、果たして私は、我侭で贅沢なのだろうか。
前頁へ戻る / 次頁へ進む / 目次に戻る