明かりの無い部屋で二人、それぞれの床に体を横たえた後、
・・・しばらくの間沈黙が続いていた。
元来、私がこうした口実は、ルキアの話を色々と聞くためであった。
あまりにも静かで、寝息さえ聞こえないルキア・・・恐らく起きてはいるのだろうが。
「・・・ルキア、」
「は、はい・・・」
―・・・やはり、な。
お前は、私がまだ・・・怖いか?
それとも、私に何か無体なことでもされるとでも、思ったか・・・?
「お前も、幼い頃はこうやって仲間と寝ていたのか?」
「はい・・・けれど、せんべいよりも薄い布団でした。
それでも一緒にいれば寒くないし、寂しくなかったので・・・。」
「寂しくなかった・・・か。
そうだな、この家に来てから、私はお前に寂しい思いばかりをさせたな。」
「でも、思い返せばそれ以上に頂いていたものが沢山ありました。
私が気付けなかっただけです。」
「気付けぬようなものしか、与えてやれなかった・・・・」
「に、兄様・・・私は兄様のお気を損ねるようなつもりで申し上げたのではなくて・・・」
「分かっている、これは自分を省みているだけだ。
もっとお前に分かるようにしておれば・・・してやることが出来れば、
溝など生まれなかっただろうに。」
「兄様・・・・」
そんなやり取りを続けるうちに、ルキアの声色にゆるゆるとしたものが混ざるようになった。
恐らく、眠気がさしてきたのだろう。
今日一日、この娘は職務に復帰し、体調を崩して戻り・・・ここでこうして横になっている。
もっともなことだ。
私はそっとルキアの頭に手を伸ばしてみた。
別々の寝具に横になっているものの、私が手を伸ばせば、
この娘の頭に触れることなどたやすい程の距離しか離れていない。
・・・この娘が、こんなにも傍にいる・・・。
「遅くまでつき合わせて悪かった、もう休め。」
「ですが・・・色々、と・・・お、話が・・・・」
「もう良い、残りは明日にでも沢山聞こう。
案ずるな、私は此処にいるし・・・お前の眠りに講じて何もせぬ。」
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