「ルキア、ルキア・・・」
翌朝、そっと私はルキアを揺り起こそうとした。
が、昨日の事もある。もしやまだ体調は不十分やも知れぬ・・・
「ルキアはまだ眠っておる。起こさぬ様。
・・・床はそのままでも良い。後程ルキアの目が覚めてから・・・」
私は着替えのために自分の部屋に戻った。
手早く着替えを済ませ、懐に先日より準備をしていた贈り物をしのばせると、
足早にルキアの部屋に向かった。
どこか悪戯をやらかそうとする童のように地に足の付かぬ心持で、襖をそっと開けた。
「・・・やはり、まだ眠って居ったか。」
枕元に座ったとき、この部屋の主はやっと目を覚ましたようだ。
「・・・兄様・・・、あ、申し訳ありませぬ、兄様よりも遅く起きるとは・・・」
「良い、昨日はお前も体調を崩しておった故。」
其の後は、夜中のことなど色々とお互いに思い出したためか、どこか気まずい空気が流れていた。
・・・別段、何か人には言えぬようなことをしていたわけではない、それは明らかなのだが。
けれども、私のあのような姿を見せられるのは、恐らくこの娘だけだろう。
その時、機を狙ったかのように清家が食事をどうするかと私に問うてきた。
「ルキア、如何する?」
「・・・え、あ・・・はい、頂きます・・・」
「体の具合はどうか?床は此の侭にするか?」
「いえ、多分大丈夫です・・・昨日よりはずっと調子が良いのです。」
「ならば、広間で摂ることにしよう。その間に床を上げさせるか。」
今日を祝いの日にしようとは言ったものの、朝食である。
いつもより少し豪華にこそさせたものの、
あまりルキアの体の負担にならぬようなものを、とだけ指示をした。
広間には、のどかな小春日和を予感させるような、柔らかな光が差し込んでいた。
そう、ルキアが昨日の晩、私に投げかけてくれたような暖かさを含んだ光だ。
「今日は、いい天気になりそうだな。」
「はい、兄様。」
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